世界遺産登録10周年、合併10周年という大きな節目を迎え、今こそ未来のために持続可能なまちづくりを目指そうと、2014年に市役所内にたなべ営業室を創設し、市そのものの価値を高める「価値創造プロジェクト」を推進してきました。
その取組の大きな柱の一つとして、全国的な人口減少社会の到来と急速な少子高齢化が進展する中、持続可能な地域の形成を目指し、たなべ未来創造塾など人材育成を柱とした「価値創造戦略ビジョン・戦略プラン」を策定、その後、国において「地方創生」を積極的に推進したことを受け、「価値創造戦略ビジョン・戦略プラン」に記載した施策を全て地方創生総合戦略に盛り込み、持続可能なまちづくりに向けて実践しています。
田辺市の人口は、全国平均よりも早いスピードで減少が続いており、2040年には52,767まで減少すると予測されています。
人口減少は、「自然減」と「社会減」によって引き起こされますが、田辺市では、特に「社会減」が顕著で、高校卒業後、主に大学進学で地域を離れ、大都市圏へと転出するケースが多く見られています。
そのため、たとえ地域を離れたとしても、将来、帰ってきたいと思える地域をいかに創るかが問われています。
田辺市の人口推移と将来人口
総務省「令和2年国勢調査(速報値)」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」(平成27年7月推計)より作成
田辺市の年齢階級別純移動数の時系列分析
資料:地域経済分析システム(RESAS)
田辺市は、紀南地域の拠点都市という特性と人口集積を背景として、内需依存型の経済構造を形成してきました。田辺市内の総生産額に占める卸売・小売業とサービス業の比率はそれぞれ16.0%と23.7%で、和歌山県の平均や和歌山市の値を大きく上回っています。
田辺市は周辺地域に財・サービスを提供することで地域経済が成り立つ商業都市としての性格が強く、人口減少は地域経済に大きなダメージを与えることが明らかとなっています。
田辺市の産業別市内総生産(2011年度)
全国平均よりも早いスピードで進行する人口減少と、内需依存型の経済構造を有する田辺市にとって、社会情勢を見定めながら、これからの時代に求められる施策に取り組んでいく必要があります。
これまでの地域づくりでは、全国総合開発計画をはじめとして、道路建設、企業誘致、港湾誘致、大規模鶏開発など人口が増加することを前提とした施策が展開されてきました。
しかし、国では、全国的な人口減少の歯止めに向け、国土形成計画や地方創生など、大きく施策を転換させています。
その中でも、特に注目すべきなのは、地域課題をビジネスで解決するCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)という考え方が挙げられます。
これからの人口減少社会に求められる持続可能なまちづくりとは、地域課題を解決しながら企業利益に結び付けることで、地域と企業がwin-winの関係性を構築するとともに、こうした企業行動を広めることにより、地域経済が循環し、最終的には人口減少を歯止めすることができるのではないでしょうか。
そのため田辺市では、CSVを実践する人材の育成とビジネスモデルの創出に地道に取り組むことが持続可能なまちづくり、地方創生につながるものと考えています。