日時:2025年07月26日 14:00~17:00
会場:田辺市役所2階 大会議室
地域課題をビジネスで解決する「たなべ未来創造塾第10期」がスタートしました。
今年度は田辺市、みなべ町、上富田町、白浜町、すさみ町の1市4町「田辺市周辺市町村広域圏」から集まった16名の塾生が、来年2月までの約8ヶ月間、様々な講義を通じて、自らのビジネスプランを考え、修了式において発表します。
主催である田辺市と熊本大学研究開発戦略本部地域連携戦略部門、連携・協力機関である金融機関や後援となる商工関係団体の「産学官金」が一体となり、CSVの醸成、ローカルイノベーターの創出を目指します。
第1日目となる今回は、「たなべ未来創造塾」の概要や講義に臨む心構えなどの共有と、塾生からの自己紹介の後、㈱南紀白浜エアポート誘客・地域活性化室長 森重良太氏お招きし、「空港型地方創生への挑戦」をテーマに、㈱南紀白浜エアポートが捉えた地域課題とその解決に向けた戦略、地域課題の見つけ方について実践事例を交えながら学びました。
田辺市たなべ営業室 石野善之
本格的な講義に入る前のオリエンテーションとして、「たなべ未来創造塾」の概要や考え方について共有しました。
全国平均に比べて、田辺市は早いスピードで人口減少が進んでいます。その結果、引き起こされる様々な地域課題に対しては、ビジネスの視点で解決に取り組む「CSV」(Creating Shared Value=共通価値の創造)の考えが重要であること、地域で出来る小さなビジネスが注目される時代へと変遷しています。
これからの講義を通して、塾生のみなさんには国の動向や社会情勢を十分に把握しながら、人口減少から生じる様々な地域課題(子育て、高齢化、後継者不足など)を知り、自身の本業を活かしてどのような地域課題が解決出来るかを見い出してくれることを期待しています。
そして、未来創造塾では、市内外の講師やこれまでの修了生から学ぶに当たり、
・何をすれば自社が生き残れるか・自社の強み、自身の特技は何か・自社のある地域のことを知る
これを常に意識して、講義やディスカッションに臨んでいただきたいと思います。
塾生それそれが企業情報や事業内容を説明するとともに、企業の課題として、「業界はどうなっているか」「これまで何をやってきたか」「このままでは自社の将来はどうなるか」について発表し、互いの課題や悩みを共有しました。
講師 (株)南紀白浜エアポート誘客・地域活性化室長 森重良太 氏
森重氏は福岡県出身で、東京の大学を卒業後、大手企業(NEC)や経営共創基盤(IGPI)を経て田辺市に移住。現在は㈱南紀白浜エアポートの誘客・地域活性化室長として、「空港型地方創生」に取り組まれています。
㈱南紀白浜エアポートが管理運営する南紀白浜空港をはじめ、地方空港の多くは赤字経営という厳しい状況の中で運営されています。そうした中、安定した経営のためには、コスト削減等による経営改善・改革が必須ですが、安全・安心の確保から限界があります。
そこで、(株)南紀白浜エアポートは「空港の発展は、地域の発展から」をコンセプトに、誘客と地域活性化の専門部署を設け、観光やビジネスによる需要そのものを創り、紀南エリア全体の活性化に向けて、地域の現状と課題、そして活性化の方向について整理していきました。
地域の現状と課題
㈱南紀白浜エアポートが課題として捉えたのは
a.人口減少(内需に依存した経済構造)b.需要の偏差(繁忙・閑散期の格差)c.消費の低さ(日帰り客の多さ、購買機会の少なさ)
これらを解決するための活性化の方向性を
a.関係人口の増大b.非ピークの底上げc.長期滞在、広域周遊
さらに、「ターゲット顧客の絞り込み」を行い、地域資源との相性が良く、非ピーク時に来訪し、高い消費単価を持つビジネス客、特にワーケーションの誘致に注力しました。この戦略に基づき、平日需要の底上げと企業誘致による雇用創出・移住定住を目指しました。
ワーケーションの取り組み
では、ワーケーションに求められる要素とは何なのでしょうか。㈱南紀白浜エアポートでは、観光とワーケーションで求められる体験を以下のように差別化しました。
〈観光〉観光客向け地域体験
・地域のハード(観光資源)を売る・地域の良いところを見せる・2度3度来ても同じような体験
〈ワーケーション〉企業向け課題解決プログラム
・地域のソフト(人・文化)を売る・地域の課題に関わってもらう・来た回数だけ地域とのつながりが深まる
このような観点からワーケーション用のプログラムを作成、提供することで、地域のソフト(人・文化)を活用し、企業にはエンゲージメント強化(生産性・創造性・組織力の底上げ)、地域には地域経済活性化(関係人口と新たな消費機会の創出)、ワーケーションに参加した社員にはウェルビーング向上といった、3者がwin-winの仕組みを実現し、観光とは異なる地域との関わり方を創出することに成功しています。
最後に
地方には多くの地域課題がありますが、その解決に向かって活動する人がいなければ、ただただ地域の魅力が低下してしまいます。関係人口や大手企業が地域課題解決に協力したいと思っても、地域で活動する魅力的な人がいなければ、事業連携やコラボレーションは生まれません。関係人口創出や企業誘致も、最終的にはそこに住む地域の人々の魅力に大きく依存しているといいます。
「皆さんは目指すビジョンを持って「たなべ未来創造塾」に参加していると思います。これからの8か月間の学びを通じて、自身の「現在位置」と「目指す位置」との差を縮めていけるような、魅力的なビジネスプランを作り上げてください。応援しています。」と10期生に向けてのエールで講義が終わりました。
空港の価値を高めるため、地域と連携して需要を生み出し、紀南エリア全体の活性化を推進する㈱南紀白浜エアポートの取組を通じて、CSVの重要性を感じる講義となりました。