日時:2025年09月13日 14:00~17:00
会場:田辺市役所 1階 多目的ホール
講師 熊本大学副学長・研究開発戦略本部 地域連携戦略部門長 金岡省吾 教授
地方創生「地方創生」とは、消滅可能性都市の指摘が契機となり、将来的に消滅する可能性が高いと指摘された市町村に対し、活力が損なわれ、生活サービスの崩壊(病院、学校、商店・・の消滅)が懸念されている地域に対し、地域の魅力や活力の低下を和らげ、持続可能な地域づくりを進めることです。
人口減少のメカニズム人口が減少していく要因としては、・自然減・社会減この二つがあります。
地方の多くが全国平均よりも早いスピードで人口減少が進んでいる理由は「社会減」にあります。
「地域経済分析システムRESAS(リーサス)」の年齢階級別移動数を表したグラフを確認すると、進学、就職、結婚といった人生の転機が訪れやすい年齢での転居が多いことがうかがえます。和歌山県、特に紀南地域では、就職や進学を理由に若者が地域外に流出し、大学卒業後や結婚を機に若者が流入していますが、流出人口が流入人口よりも多いことから「社会減」が進んでいます。
大学に通い学びを深める、都市部に就職し技術を磨く、こういった選択は間違ったものではないと思います。それよりも、地域を離れた若者が将来的に戻って来たい、都市部よりも魅力的だと思ってもらえる地域をどう作っていくかを考え、行動していくことが、地方の人口減少を和らげることに繋がるのではないでしょうか。
若者の意識の変容と修了生の変化新しい地域活性化の考え方として、2つの地域力の強化が求められています。ひとつは、地域課題解決する地域の力、もう一つは、地域課題を解決し、その行動やストーリーが共感や愛着が人々を惹きつけ、地方への新たな人の流れを創出する地域の力です。
実際に、地域課題解決に取り組む行動やプロセスは、実践者や若者たちの意識を変容させています。
例えば、たなべ未来創造塾の1期生である岡本さんは、鳥獣害対策を皮切りに、自らが主体的に地域課題解決に積極的に取り組む中で、耕作放棄地の再生や6次産業化といった新規事業に挑戦し、地域内外の人々を引きつけることで、移住者の増加とそれに伴う新規雇用の創出を推進し、結果的に人口減少に歯止めをかける行動へと広がりを見せています。
また、若者たちが地域の実践事例を知り、実践者と交わることで、地域や地域課題解決に対する意識にポジティブな変化を起こし、地域への愛着を深めるきっかけになっています。
地域課題解決に取り組むクールな(かっこいい)大人の存在は、若者にとって魅力的な地域を形成する上で重要な要素の一つになろうとしています。
地域で活躍する皆さんのようなプレイヤーが、小さな一歩、スモールプロジェクトを始めることで、地域の未来は明るくなるではないでしょうか。
講師 (株)高垣工務店 代表取締役 石山登啓 氏(第2期生)
高垣工務店は創業74年を迎える老舗の工務店です。石山さんは、病気で倒れた当時の社長の後を引き継ぎ、厳しい経営の中、スタッフとともに会社の存続をかけて奮闘し、お客様からの支持をいただける工務店として成長しました。
コミュニティーが武器になるお客様や地域の人々の支援を受け、会社を立て直していった高垣工務店では、顧客に寄り添い、強い信頼関係を築くことを大切にした結果、日本最大の工務店ネットワーク「JHABnet」において、3年連続で顧客満足度No.1の会社として評価を受けるようになりました。
その後も、顧客の声を聴き、ニーズに真摯に応える企業スタイルが、健康事業デイサービス「きたえる~む」や、発達が気になるお子様やその母親を支援する放課後デイサービス「ハッピーテラス」といった地域のニーズに応える事業に発展していきました。
そうした中、参加した「たなべ未来創造塾」で金岡先生に教わった「コミュニティーは武器になる」という言葉に衝撃を受け、多くの人が集い、繋がり、皆で学び、しゃべって、創造することができる場所「シリコンバー」の創設、「コミュニティー×住宅」という切り口で実施している「高垣タウン」といった事業にも発展しています。
若者が働きたい職場とは高垣工務店では、若者が働きたい職場作りにも力を入れており、県外の合同説明会にも積極的に参加し、福利厚生ではなく、自社理念をメッセージとして発信することで多くの学生に共感を得ました。
また、採用プロセスでは、1泊2日で実際に従業員と触れ合う体験を提供し、仲間意識を高めるイベントを開催し、既存のスタッフの意見を尊重し、新入社員にも働きやすい環境と成長の機会を提供することで、若者がやりがいを感じ、自分の仕事に誇りを持てる環境が形成されています。
高垣工務店は、地域のコミュニティーとの深い繋がりを武器にし、地域課題を解決していく事で「地域から必要とされる会社」を目指しています。そうすることが、「働きがい」に繋がり、若者たちが「働きたい会社」へとなっていきました。
人口減少が進む地方であるからこそ、地域に寄り添う企業行動が必要とされ、注目されていると感じる講義となりました。
1日目
2025.07.26
2日目
2025.08.09
3日目
2025.08.23
4日目
2025.09.06