日時:2025年11月21日 14:00~17:00
会場:田辺市役所 2階 大会議室(オンライン)
今回は、熊本大学副学長・研究開発戦略本部 地域連携戦略部門長 金岡 省吾教授、(一社)くま川スポーツアカデミー 代表理事 松嶋純也氏、(株) onlyone benefit 小山葵氏を講師に迎え、「子育て支援」と「ビジネスの両立の可能性」、そして「コミュニティ」と「共助」について考察していきました。
熊本大学副学長・研究開発戦略本部 地域連携戦略部門長 金岡 省吾 教授
前回までの復習
地方創生とは、「都市部に集中する人々を地方に呼び戻し、地域の魅力を再発見し、人口減少に歯止めをかける」ための国の総合的な取り組みをいい、地域の稼ぐ力の底上げや、人口減少に起因する地域課題の解決等も含まれます。前回までの講義の中でも「RESAS(年齢階級別純移動数の時系列分析)」のグラフを使用し、人口減少のメカニズム(主に社会減)について学んだと思います。進学や就職で地元を離れた若者たちに地元に帰ろうと思ってもらうには、魅力的な地域だと感じてもらう何かが必要です。今回の講義では、「コミュニティ」について考えていきたいと思います。
東京の企業はコミュニティに関心
前回までの講義の中でも触れましたが、積水ハウスや旭化成、良品計画等では、子育て世代をターゲットととし、コミュニティ形成を軸にした事業を展開しています。
また、道路整備などの公共事業を住民参加型で行い、経費節約によって若者定住促進住宅を建設。子育て世帯を支援することで地域コミュニティの強化を図った長野県下條村。共働き子育て世帯をターゲットに、認可保育園の整備や送迎保育ステーションの導入等に取り組み、子育て世帯の転入が増加した千葉県流山市。これらの自治体は子育て世代を強力に支援することでコミュニティの形成や定住促進に成功しています。
舟橋村 ~子育て共助のまちづくり~
富山県舟橋村は富山市から電車で15分ほどのところにある面積3.5平方キロメートルほどの小さな自治体です。公共投資による宅地開発をきっかけに、民間事業者の住宅開発が進み、子育て世代を中心に人口が増加しました。しかし、この人口増加は安価な地価によるベッドタウン化によるものであり、近隣市町との地価が均衡してくると住宅開発が鈍化し、人口流入数も次第に減少していきました。また、合計特殊出生率についても大きな改善が見込まれなかった為、将来的には高齢化→人口減少局面の突入が懸念されるようになりました。
こうした課題の解決に向け、舟橋村では先駆事例を研究し、「子育て共助のまちづくりモデル事業」実施に向けて行動しました。しかし、当初の取組みでは、地方企業では商品企画力・資金力・コミュニティ形成力が不足しており、都心部のように協力企業の力に頼るわけにはいきませんでした。
そこで、舟橋村は地域事業者との勉強会や意見交換会といった伴走支援を行うことで、「自ら学び、考え、動く」人づくりに取り組み、「舟橋村で子どもをもう一人産み、育てたい」と思える環境づくり、子育てコミュニティの形成(モデルエリアを設定し、賃貸住宅事業、子育て支援センター設置、誰もが気軽に子育て世代が集える公園づくり)を目指したプロジェクトを実施することが出来たのです。
ここで重要となったのが、“ゆるやかな”コミュニティ形成です。
まず、子育て支援では、立派な施設や豪華な遊具といったハードも、ベテラン保育士が対応するのではなく、既存の施設を活用し、保育士や保護者などの地域住民が気軽に集い、気兼ねなく相談し合える交流の場が提供され、多くの子育て世代が訪れるようになりました。
さらに公園づくりでは、遊びに来た人を巻き込む公園を目指し、子どもたちを始めとする地域住民が公園の運営に関わる「園むすびプロジェクト」を実施し、子育て世代や中高年世代の様々な人たちが繋がることで公園への愛着を育み、公園で行われるマルシェ等のイベントを通じて、コミュニティが醸成されるようになりました。
こうした空間が多くの参加者に活用されることで共助や居心地の良さが育まれ、子育て世代の舟橋村への愛着と子育て支援への期待感に繋がり、結果として、子育て世代の流入を促進するなどの効果が表れています。
子育てビジネスへ挑戦
修了生の取組事例についても少しお話したいと思います。
魚津市でオーダーメイドのマカロン専門店を経営されている大島さんは、子育て(家事)と仕事の両立に悩むママたちがより暮らしやすく、働きやすくなる社会を目指して活動する団体「ココママ」を立ち上げました。ココママでは、マルシェや、フリーランスママの座談会や勉強会、ワークショップなど、多様な活動を実施し、子育てビジネスを軸にしたコミュニティ形成に繋がっています。
こうした活動は、地域課題解決に加えママの働き方をも解決しており、メディアを通じて広く報じられるようになりました。結果として、ココママの事業と地域活動が地域に好影響を及ぼし好循環を生んでいます。
講師 (一社)くま川スポーツアカデミー 代表理事 松嶋純也 氏
松嶋純也氏は、熊本県八代市を拠点に活動されており、やつしろ未来創造塾第1期を修了されました。現在は、サッカーとダンスのクラブチーム運営を主軸としつつ、他の体育教室や小学校のサッカー部、保育園の体育指導、さらには民間学童保育所の運営など、多方面で活躍されています。
全国的な課題ですが、松嶋氏が活動されている熊本県八代市でも人口減少、特に出生数の減少が深刻であり、これは自社事業の存続に直結することから、危機感を覚え、未来創造塾に入塾したといいます。
入塾時、松嶋氏が解決したいと考えた地域課題は、「学童保育の待機児童」と「親子が休日に楽しめるイベントの少なさ」の2点でした。そして、企業として優先的に解決に取り組みたいと考えた課題は、「小学校低学年会員の少なさ」でした。これは将来の経営を考えた際の大きな不安材料であり、当時はコロナ禍の影響や練習時間が夜であったことによる送迎負担の大きさから、新規会員の増加が停滞していたといいます。
これらの課題解決策として、松嶋氏は2つのビジネスプランを考案し、実施しました。
1つ目は、「学童保育と習い事のコラボ」です。具体的には、学童保育として子どもを学校まで迎えに行き、みんなで宿題をし、その後にサッカーやダンスを習うという連携モデルです。入塾中に着手したこの新規事業は好評を博し、企業課題であった小学校低学年会員の獲得においても、短期間で定員が満員となりました。
2つ目は、「親子DEホリデー」というイベントの開催です。スポーツ体験やマルシェ等を開催することで、親子が気軽に楽しめる場を企画運営しました。年に2回開催されているこのイベントは、未来創造塾の塾生にも協力してもらうことで多くの方々が関わりながら運営されています。今年9月の開催では、集客に悩む他の2イベントと連携することで、過去にない盛り上がりを見せ、本当に多くの方に来場いただいたといいます。また、「親子DEホリデー」の参加者に対し、公式LINEグループへの参加も呼び掛けており、未来創造塾の塾生たちが関わるイベント告知や、自身のスポーツクラブの生徒募集に活用しています。
松嶋氏は、これらの事業を通じて、スポーツを単なる競技としてだけでなく、共助のきっかけとして捉えるようになったと締めくくりました。
松嶋氏からは、以下の力強い言葉をいただきました。 「未来創造塾を通じて、地域のことを知り、地域と繋がることの重要性を感じました。地域の困り事に向き合うことは、新たな価値を生み出すチャンスです。今後も未来創造塾で知り合った仲間たちと切磋琢磨しながら、まちづくりに取り組んでいきたいと思います」
講師 (株) onlyone benefit 小山 葵 氏
小山さんは、たなべ未来創造塾第5期修了生で、本業はファイナンシャルプランナー(以下:FP)です。田辺市を中心とした地域で約13年間活動されています。
小山さんの本業のメインターゲットは20代~40代の子育て世帯になるのですが、田辺市やその周辺自治体においてもそういった層の人口は減少しています。また、地域においては女性の働き方の選択肢が少ない事、子育て支援サービスが少ないことも課題であると考えました。
そこで、小山さんが最初に取り組んだのが、働くお母さん、特に起業しているお母さんにフォーカスしたフリーペーパーの制作です。働く選択肢=働きやすさだとも言えます、多様な働き方を紹介することで、地域の働きやすさが改善されるのではないかと考え、制作したこのフリーペーパーは、新聞社やテレビ局でも取り上げられ、一定の反響があった事から、2度作成したのですが、小山さんが一人で取り組み続けるには作業量が多く、また収益面での不安が大きかったことから現在は休止しています。
次に取り組んだのが「地域の店舗と親子をつなぐ」をコンセプトにしたイベント開催です。当時はコロナ禍によりリアルなイベントが少なくなっていたこともあり、未来創造塾の修了生たちと連携し、市内のSLを展示している公園を会場に「汽車ぽっぽ公園マルシェ」を開催しました。起業したお母さんを中心に、多くの方に出店していただき、普段は中に入ることの出来ないSLの中の見学やカヌー体験、職業体験等を盛り込んだこのマルシェには、多くの方が集まり大盛況であったといいます。
そして、これらの経験を経て、次のステップとして、現在も取り組まれているのが「一時預かり専門の託児所もいもい(以下:もいもい)」です。田辺で子育てしてもいいと思うには、もっと直接的な支援サービスが必要だという思いから、昨年度から開業しています。もいもいの特徴は利便性の高さです。当日予約・1時間単位、理由不問で預かりが可能です。また、フィンランド式の遊び中心の少人数制、専用アプリで予約や写真付き保育レポートにより子どもの様子を確認できます。さらに、スタッフの子育ても応援したい、働き方の選択肢を増やしたいという思いから、出勤日はスタッフの希望休を100%実現しており、出勤できる人がいない場合は休業しています。
現在、託児所経営単体では赤字経営となっていますが、本業であるFPへの送客に成功しており本業での収益は上がっているとのことです。また、子育て世代をターゲットにした事業者と連携し、子育て世代に特化したイベントの企画・運営することで、自社事業のPRだけではなく、事業者同士協力し合えるコミュニティ形成にも取り組んでおり、関わるみんなが発展する仕組みづくりを目指されています。
「地方で1人で何かをするのは大変ですが、誰かと一緒にすることでできることもたくさんあります。みなさんも連携を意識して事業づくりを考えてもらえればと思います。」
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