日時:2024年08月17日 14:00~17:00
会場:田辺市役所 1F 多目的ホール
地域課題の起因となっている「人口減少」。 そのメカニズム、そして、「地方創生」とは何かを、官民の取組事例の紹介を交えながら教えていただきました。また、ケーススタディとして、たなべ未来創造塾修了生から、人口減少に歯止めをかける企業行動について学びました。
講師 熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長 金岡省吾 教授
地方創生
日本は2010年をピークに人口減少が進んでおり、消滅する自治体が出てくるのではないかとささやかれる時代に突入しています。地方創生とは、一言でいうと、「人口減少問題の克服にコミットする新たな地域づくり」であり、目指すべき目標は下記の2点です。
①将来にわたって「活力ある地域社会」の実現
②「東京圏への一極集中」の是正
人口減少のメカニズム
要因となっているものは
①出生率の低下による「自然減」 ②転出超過による「社会減」
上記2点であり、特に地方にとっては、進学や就職による「社会減」が人口減少の深刻な要因となっており、これが全国的に起こることにより「東京圏一極集中」の状況を生み出しています。
しかし、若者が経験を得るために、都市部に出ていくことは仕方がないことであり、止めるような事ではなく、それよりも、一度、都会に出た若者が地域に帰ってきていないことが問題であり、若者をいかに地域に戻すか、将来帰ってきたいと思える地域をどう作るかが重要になるのではないでしょうか
人口減少を歯止めする地域、企業
自治体事例としては、ターゲットを絞ったシティーセールスを実施した千葉県流山市や、若者定住促進住宅事業を実施した長野県下條村、民間事例としては積水ハウスや旭化成の住宅事業等があり、これらはいずれも、「子育て世代」をターゲットとし、コミュニティ形成に重きを置いており、子育て世代の受入れに成功しています。
企業の考え方も変化してきており、利益を重視した従来の取組よりも、利益率は下がるが、地域課題の解決を取入れた継続的な事業を実施することで、中長期的な視点で、地域や社会と価値を共有し、企業価値を高めていく「共通価値の創造」(CSV)の考え方を取り入れ、積極的に地域へ関わろうとしています。
また、若者の仕事に対する考え方にも変化があり、「地方創生に関わりたい」「地域課題解決に資する仕事に就きたい」と考える若者が増えており、活躍の場を地域に求め、就職先として選択するケースが増えつつあります。
このように、世の中の流れが少しずつ変化してきており、地域課題をビジネスで解決する「地域から必要とされる会社」に注目が集まっています。
地域に根差したビジネスを創出し、取り組む“かっこいい大人”が「社会減」を改善し、地域を救う、そういう世の中になってきている、そう感じた講義でした。
講師 (株)高垣工務店 代表取締役 石山登啓 氏(第2期生)
社長が病で倒れたため、残されたスタッフ5名を率いて、会社の再建を図ることに。
どうすれば、会社が生き残れるのかを考える中で、お客様に寄り添い、信頼関係を築くことを追求した結果、日本最大の工務店ネットワーク「JHABNET」で3年連続顧客満足度No1(お客様紹介率が88%)を受賞。
そして、ニーズに応える中で、機能訓練専門デイサービス「きたえるーむ」や、発達が気になる子どもを対象にした放課後等デイサービス「ハッピーテラス」といった事業を展開、多角化経営を行うようになりました。
また、たなべ未来創造塾での金岡教授の『コミュニティは武器になる』という言葉に感銘を受け、皆で学んで、しゃべって、創造する場、新しい価値が生み出される場として「シリコンバー」を作るにいたりました。多くのセミナーやイベント、記者会見、そして未来創造塾の会場としても活用されるなど、人と人がつながり、新しい価値が生み出される空間となっています。
『コミュニティは武器になる』 顧客に寄り添い、ニーズに応え、人と人とのつながりを大事にする、こういった活動を続け、発信していると、県外の若者達が高垣工務店で働きたいと集まってくれるようになりました。
(株)高垣工務店は、しっかりと顧客に寄り添う「地域から必要とされる会社」を目指す、そういった思いを前面出し、「働きがい」を作ることで、多くの若者の共感を得て、「働きたい会社」となり、結果として地域の人口減少の歯止めにも寄与しています。
企業が地域課題をビジネスで解決することで、「地域から必要とされる会社」となる。
そんな企業に若者が魅力を感じ、「ここで働きたい」へ。
こうした一つ一つの積み重ねが、結果として人口減少を歯止めしていくことにつながるのだと感じた講義となりました。
1日目
2024.07.20
2日目
2024.08.03