1日目

開講式

日時:2024年07月20日  14:30~17:00

会場:田辺市役所 1F 多目的ホール

地域課題をビジネスで解決する「たなべ未来創造塾第9期」がスタートしました。 

「たなべ未来創造塾」は、主催である田辺市と熊本大学熊本創生推進機構、連携・協力機関である金融機関や後援となる商工関係団体が「産学官金」一体となり、CSVの醸成、ローカルイノベーターの創出を目指す取組です。

今年度は13名の塾生が、令和7年2月までの約8ヶ月、様々な講義を通じて、自らのビジネスプランを考え、修了式において発表します。

第1日目となる今回は、田辺市と熊本大学熊本創生推進機構の共同主催により、「たなべ未来創造塾第9期」開講式を開催しました。

■主催者挨拶

たなべ未来創造塾長・田辺市長 真砂充敏

第9期の皆さんを迎え、新庁舎にて「たなべ未来創造塾」の開校式を迎えること、本当にうれしく思います。

昨今、消滅自治体というという言葉をよく聞く中、田辺市では10年前より人口減少を見据えながら、いかに次世代の若者が元気で活力を持ち、幸せに生活出来るようなまちづくり、そして、遠方からでも田辺市に興味を持ち継続的な関係性を維持してくれる「関係人口」の増加、この両面への取組を実施してまいりました。

今期で塾生が100名を超え一つの節目を迎える「たなべ未来創造塾」は、元気で活力を持ち、幸せな生活を送る、そのような地域の担い手を育てる取組の1つであります。

9期生の皆さんには2月の修了式までの長丁場となりますが、塾を通して様々なことを学び、自身の思いを形にし、実践していただけることを心より期待しています。

熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長 金岡 省吾

「たなべ未来創造塾」が、今期で塾生が100名の大台を突破するということもありますので、少し振返りをさせていただこうかと思います。

私が、田辺市とご縁をいただきましたのが11年前になります。市内の色々な方とお会いし、当時の田上さんの取組を始め,現在の未来創造塾の動きを先取る企業行動をみつけ,田辺市には可能性を感じたことを思い出しました。その後、「たなべ未来創造塾」が創設され、修了生及び田辺市が各種賞を受賞される等、全国的な評価を受け、本日、9期の開講を迎えましたことは、感慨深い気持ちです。

各期を振り返ると,1~3期は塾の基礎作りとして「個々の塾生が輝きはじめた」ステージ,4期は塾生の個性を武器に関係人口とのエンゲージメントが始まった塾がステップアップしたステージ,5~6期とすすむと塾生がアワード表彰など,塾生がフューチャーされ始めたステージ,7期で田辺市がシティプロモ―ション金賞,つまり,未来塾の取組は,塾生の個性を輝かせ,地域内外で繋がり輝くシステムだと評価されたステージだと思います。昨年まで8期で「かっこいい大人」95名が巣立ち,苦労はありましたが,未来塾は確実にステップアップしたと思います。

本日は,今後の10年を見据えつつ,9期生が門出するとの意味があります。塾生が100名を突破し、ある種の節目を迎える9期生の皆様には、これからの未来に向かった第一歩を踏出していただきたい、その一歩が次に繋がる大きな一歩になり、これからの時代を作っていくと思います。

9期生の皆さんが、塾を通して何を感じ、何を考え、そして今後どのようなプロジェクトを進めていくのか、未来創造塾の未来は、皆さんの羽ばたきしだいであり,これからがとても楽しみです。これからの8カ月間、頑張ってください。

■来賓挨拶

近畿財務局和歌山財務事務所長 塩士 泰啓 氏

近畿財務局は、財務省の出先機関といたしまして、また金融庁の事務委任を受け、業務上、地方公共団体、金融機関、民間企業と密接な関係を持ち、この3者のつなぎ役として、地域貢献を果たすべく、地域活性化に向けた取組を進めており、この「たなべ未来創造塾」につきましても、平成29年度の第2期からお手伝いさせていただいております。

この田辺の地で始まりました未来創造塾の取組は、全国的にも非常に注目を集めております。 私自身も、地域に対する非常に熱い想い、塾生そして修了生の皆様の強い繋がり、絆で結びつけられている非常にすばらしい取組であるというふうに感じております。

9期生の皆様につきましても、今後のご活躍を大変楽しみにしております。

日本政策金融公庫南近畿地区統轄 田上和彦 様

毎回申し上げますが、この塾の大ファンでございます。

平成31年の3月に内閣府のまちひとしごと創生本部の会合で、田辺市がこの取組をご発表されて以来、虜になってございます。

田辺市出身の方で、住谷栄之資氏という方がおられます。この方は、日本にアメリカの外食産業を広められた方なのですが、還暦後に、子供達の職業・社会体験施設「キッザニア」を開業され、80歳になられた今は、財団を創立され、外国人留学生向けの交流施設を設立される等、より良い日本・世界にするため精力的に活動されています。

こういった起業家精神は、同じ田辺生まれのこの「たなべ未来創造塾」にも相通ずるものがあると思います。

第9期生の皆様方、無事に来年の2月の終了式を迎え、ビジネスプランを実行に移し、そして皆様が大好きなこの田辺市を盛り上げていただけることを願っております。

■オリエンテーション~たなべ未来創造塾が目指すもの~

講師:熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長 金岡 省吾 教授

私は、大学でランドスケープ(環境農学)を学んだあと、シンクタンクに就職し、多様な地域づくりに携わってきました。

しかし、立派な戦略・戦術提案を行っても地域で実践できないとの事実にぶつかり始め、提案するだけでなく、動く仕組みを作ることが必要だと実感する中で、富山大学に転身し、地域再生塾を大学内で執行実験を行い、その後,魚津市にシステム移転の実証実験を行ったのが「魚津三太郎塾」です。その後、そのシステムを富山から田辺へとノウハウ移転し,田辺では現在のように塾のシステムを発展させ、そのお陰で、田辺から熊本へ波及しはじめ、3年前に熊本大学にIターンし、現在に至ります。

今では、地域再生塾の修了生たち、地域課題に挑んでいる大人たち「ローカルイノベーター」が注目されるようになり、塾のシステム自体も高い評価を受けております。

例えば、中小企業白書で記載されている中小零細企業の生き残り策の一つとして、労働生産性や規模拡大ばかりでなく、企業が持続的に地域の課題解決に取り組む経営戦略を語れることが重要であり、そのために、支援機関と自治体が連携する経済モデルとして、動かすシステムが必要だと示されており、まさに、地域再生塾がその形の一つでないかと考えています。

また、新しい政策として農村RMOを展開する農林水産省も未来創造塾の取組に注目をいただくとともに、国土形成計画(第3次計画)に示されている、地域課題を解決する力、地域の愛着を高め,地方への新たな人の流れを創出するといった2つの地域力の醸成により、「地域を支える人材の確保・育成」等といった点は、未来創造塾を核とする地方創生の取組に合致しています。

同じく国土形成計画に示されている関係人口の創出につきましても、田辺市で実施されている越境学習事業「ことこらぼ」を熊本でも実施するなど、多くの都市圏企業が地域再生塾に興味を示します。

田辺市では神島高校と連携し、「神島塾」を実施されていますが、熊本でも県内6つの塾が高校との連携事業を始めました。このような連携を通じ、地域の「かっこいい大人」との関わりを作っていくことで、地域に興味・愛着を持つ学生を増やすことが重要だと考えています。実際に高校生は、地域課題解決するかっこいい大人の背中に反応し、地域の愛着を高め、地域に戻り活躍する、あるいは都会から地域に貢献する仕事に就くなど、先の国土形成計画に示された、新たな地方への人の流れを創出する可能性が潜在しています。

したがって、今後は、今まで以上に地域の力を強めることが求められます。地域課題を解決し、地域の魅力を高め、是非とも、人々の地域への愛着を高め、そして、若い人達にそれを伝播させ、地域に関わりたいと思えるようにしてください。

そのためには、地域の課題解決をビジネスで取り組む皆さんのような地域のプレイヤーが不可欠であるとともに、公務員や金融機関、高校の先生等の地域のプレイヤーを支える人材,さらには、地域のプレイヤーに域外から化学反応を引き起こす、都会に住みながら地域に関わる関係人口の方々、この3者が、人を変え、地域を変え、大きく時代を変えると思います。

時代を変える可能性ある、ローカルイノベーターの卵である皆さんが地域には必要です。そのためには、小さなプロジェクトで良いので、皆さんがまず最初の一歩を踏み出し、動き始めることが重要です。

田辺市たなべ営業室 石野善之

田辺市では全国平均より早いスピードで人口が減少しています。

人口減少は、生活関連サービスの縮小、空き家・空き店舗の増加、学校の統廃合、などの様々な地域課題を引き起こし、それらが積み重なることにより生活利便性や地域の魅力が低下し、さらに人口減少を加速させます。

これらにどう立ち向かっていくか方策を練る中、当時、富山大学で地方創生を実践されていた金岡教授にご縁をいただき、ご指導、ご協力をいただいています。

金岡教授の指導の中で、特にこれからの時代に重要とされる地域課題をビジネスで解決することで地域と企業が共通の価値を創造するCSVという考え方を教わり、これを具体的に実践するために「産官学金」が一体となった支援体制を構築し、地域課題の解決に向けた人材育成事業「たなべ未来創造塾」が平成28年に創設されました。

これまで8期95名の修了生を輩出し、多様なローカルイノベーションが生まれ、全国的から注目を集めています。

その理由は、

①ビジネスプラン実行率68.3%という高い実行率
②修了生同士が繋がり、新たなイノベーションが生まれビジネスが自走している

たなべ未来創造塾は、大きな1つのプロジェクトを目指すのではなく、小さくても地域に根差した沢山のビジネスを生み、繋がり、連鎖させることによって、面として魅力を高め合っていく、そういう地域づくりを目指しています。

自分の身近にあって、自分の力で解決できる、そんな課題を見つけ、ビジネスチャンスにしていきましょう。

■塾生自己紹介

参加動機や抱負、企業情報や事業内容等について、各自1分で自己紹介を行いました。

■トークセッション
テーマ「たなべ未来創造塾とこれからのまちづくり」

パネリスト
真砂充敏(田辺市長、たなべ未来創造塾塾長)
塩士 泰啓  様 (近畿財務局和歌山財務事務所長)
武藤 純司  様 (日本政策金融公庫田辺支店長)
坪井 直子  様 (たなべ未来創造塾第4期修了生 ㈲ツボ井)
山田 かな子 様 (たなべ未来創造塾第7期修了生 ㈱TODAY)

コーディネーター
金岡 省吾 教授(熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長

<金岡教授>
これまで数多くのアワードを受賞し、今期、いよいよ塾生が100名を越えます。これまでを振り返っていかがでしょうか。

<真砂市長>
修了生の皆さんは本当によく頑張ってくれており、大変頼もしく感じております。 特に1~3期の修了生に関しましては、この塾の基礎を築き、良いスタートダッシュを切ってくれました。
本当に多くの修了生が、多くの賞を受賞し、活動の幅を広げてくれており、市として大変ありがたく思っております。

<金岡教授>
塾の運営をはじめ大変なご尽力をいただいおりますが、たなべ未来創造塾への思いなどをお教えください。

武藤支店長
連携機関として過去3年に渡り、「たなべ未来創造塾」に関わらせていただきました。
私が思う「たなべ未来創造塾」の強みは、塾生同士の「地域のビジョンの共有」と「コミュニティの形成」です。 修了生同士が縦横に繋がりながらスモールビジネスを次々と実施していく、そうすることによって、強い地域コミュニティが形成されていると感じております。
この3年間を振り返ると、塾生の方々のビジネスプランのブラッシュアップ、事業実施に向けた支援業務を通じて、我々も地域の課題について多く学ばせていただきました。また、関係機関の方々や、田辺市の方々との緊密な連携を通じて、田辺市の一員になれたと強く思うことができ、地域に強い思い入れを持つようになりました。
今後も引続き、地域の一員として各種関係機関の方々と連携しながら、塾生の皆様を支援していきたいと思っております。

<金岡教授>
講義への出席やHPでの事例紹介や金融機関との意見交換会の開催等多くのご支援をいただいておりますが、たなべ未来創造塾に対してどのような印象をお持ちでしょうか。

塩士所長
「たなべ未来創造塾」の取組は、財務局内でも、地域活性化の取組事例ということで情報共有されておりました。 また、私自身も過去に和歌山県で勤務していたという経緯もあり、非常に注目していたところであります。
先ほどの9期生の方々の自己紹介にされても、地域課題を意識された内容のものが多くあり、様々な観点から、課題解決に取り組もうとされている点が非常に素晴らしいと感心していたところでございます。
私共も、地域活性化の取組をお手伝いさせていただいているのですが、その地域の課題や、目指すべきその方向性、向かうべき姿について、地域内でいかに共有・協働していくかが重要であると思っております。
この「たなべ未来創造塾」では、塾生の皆さんそれぞれが、地域の課題解決や、地域の資源を活かすために地域に何かできないかという熱い想いを持っておられ、職種が異なっていても、共通の課題認識のもとで意見交換する中で、修了生も含めた強い繋がりで結ばれておられます。
そして、皆様の一つひとつの取組が積み重なり、さらに広がり、大きな取組になっていることが非常に素晴らしいと思っております。

<金岡教授>
たなべ未来創造塾を受講した時の感想などをお教えください。

<坪井さん
最初にたなべ未来創造塾の話を聞いた時は、最終プレゼンが嫌だなとは思ったのですが、内容を聞いてみると、楽しそうだと思える部分が多く参加することにしました。
参加してみると、同期とは日毎に仲良くなっていきますし、最終プレゼンが近づいてくると、夜な夜な同期生で集まり、何度もプレゼンの練習をしたり、まるで学生時代のように楽しい時間を過ごせました。
年齢、性別、職業は違いましたが、それらを超えたすばらしい仲間が出来ることが、未来塾の良さだと思います。
4期生は移住されてきた方が多くいて、ちょっと違う視点、都会から田辺に来た視点でのお話を聞く機会が多く、自分自身の田辺愛が深まりました。

<山田さん
私は、東京からUターンしてすぐ「たなべ未来創造塾」に参加しました。
参加した理由は、地域から長く離れていたこともあり、戻ってくるのであれば、一から学ばなければ思い参加しました。
塾に入ってみると、同期生は、異業種ばかり、年齢や性別も異なっており、こんなにもこの地域には色とりどりの人がいるのか驚き、わくわくしました。
私の経験からにはなるのですが、9期生の皆さんに心掛けていただきことが2つあります。まず1つは、同期生の皆さん同士で、自分自身がしたいこと、その理由、その事業への思い、地域に対する思い等を語り合う事です。
何度も何度も語るうちに、自分自身に自信がついてきますし、同期生どうしで思いが共有され、互いに応援したくなるはずです。修了生の活動の中には、異業種どうしで連携して新規事業を立上げ事例も多くあります。しかし、皆さんも修了生と同じように、共通のテーマを見つけて、必ず何かを結びつけて事業化しなくてはならないというものではありません。でも、思いを共有することで、2年後3年後に結びつくかもしれないし、互いに助けあえる部分が出てくるかもしれません。だから、まず自分の色々な思いをこの8カ月間でたくさん語るようにしてほしいと思います。
もう1つは、塾のカリキュラムでは、前半が座学中心、後半がプレゼン資料や発表の精度を上げていくような内容になると思うのですが、座学の時間も自分のやりたいと思っているアクションプランはどんどん実践してください。トライ&エラーを繰返すことで最終発表もより良いものになるはずです。
ちなみに、私は意識的に市役所に通うようにしていました。
講義とは別に、営業室へ担当者の方の顔を見に行き、私は普段元気に過ごしてますよっていう意思表示をしたり、講義や事業についての雑談をしたり、塾を生活の一部にするようにしていました。こういうことが後々活きてくると思います。

<金岡教授>
地方においては、特に、大学進学や就職等により市外、県外に人口が流出する「社会減」の影響が大きいため、地域を離れる前に地域の将来を担う子供たちと地域の大人が関わることで、帰りたいと思ってもらえる地域をいかに作るかが重要だと言われていますが、これまでの取組を踏まえ、いかがお考えですか。

<真砂市長>
市内の学生と会話をしていますと、ふるさとに残り活躍したい、過ごしたいという声も多くなっているように感じており、こういった気持ちを持ってくれているという事実を我々がきちんと受止め、どのように対応していくかが大事であると認識しております。
田辺市では、ふるさと学習といたしまして、故郷について語れる人材育成事業「語り部ジュニア」を小中学校の総合学習で実施しており、また、世界遺産熊野古道を含む、地域の森林環境について学ぶ、森林環境学習も行っております。
そして、高校に関しましては、神島高校「神島塾」との連携はもちろん、田辺高校では、探究学習として地域や地域課題についての学習を進めてくれています。
こういった取組が、進学や就職により故郷を離れた子供たちが、いずれ故郷に帰るきっかけや、遠く離れた地で生活をしていても、関係人口の一人として故郷に関わり続けるきっかけになると考えており、根気強く取り組んでいくことが重要だと思っております。

<金岡教授>
日本政策金融公庫では、高校生ビジネスプラン・グランプリを実施されていますが、神島高校は毎回ご参加をされているとお聞きしております。神島高校のこうした取組をどのように受け止められていますか。

武藤支店長
公庫が主催している「高校生ビジネスプラン・グランプリ」は、2013年から開始いたしまして、神島高校は、2015年から毎年参加いただいており、継続して良い成績を収められております。 昨年度の第11回大会では、応募プラン数5,014プラン中、ベスト100に選出されました。
全国のベスト100に選出されますと、近畿2府4県の選出校が集まり、ビジネスプランを発表するのですが、他校がITを使った華やかなプランを発表される中、地域課題をすごく意識したプランの発表をしてくださいました。
神島高校「神島塾」では、地域について深く知る、地域について大人の方と語り合うということを通じて、地域ビジョンの共有がなされているように思います。高校生のときからこのような意識が養われているということは大変意義のあることだと考えます。
今年度の「神島塾」の活動の中で、「自分たちの活動を中学生向けて発表したい」という意見も出ており、神島高校や神島塾に対しての思い入れや、誇りを感じることが出来ました。この思いが深くなることで、地域を誇れる人間になる、このように繋がってくるのではないかと思います。
神島高校の取組は、ビジネスプラン・グランプリに応募する、賞を取ることが目的ではなく、地域を本当に知るということが目的になっているところが素晴らしいと感じております。

<金岡教授>
山田さんは、高校生が地元企業や地元の大人と触れ合う機会の創出に取り組まれています。高校生と地元企業が共創する取組の中で生まれた事例や感じたことなど、少しご紹介ください。

<山田さん>
私は、修了生の野村さんと共に、若年層と地域産業の相互理解事業実行委員会を立上げ、地元の高校生と地域の企業が出会う場所を作り、可能性があれば共同し、一緒にプロジェクトを実施する、といった活動をしています。
これまで色々な地域内企業に参加していただいおり、昨年は、JA紀南さんと紀菜柑の看板リニューアルを一緒にやらせてもらい、地元の高校生8人が、そのプロジェクトに参加しました。
プロジェクトでは、修了生の竹林さんにも参加いただいて、高校生たちにデザインについて学んでもらいながら、自分たちの意見をしっかりと伝えるという作業を行い、最終的に幅25m程ある看板を仕上げました。
プロジェクトに参加した高校生たちの中には、大学の地域創生学部や、まちづくり学科へ総合型選抜入試で大学を決めた生徒もおり、かなり早い段階で、進学先を決めた生徒もいました。
あともう1点、私は、トウザン荘っていう高校生の探究ルームを運営しています。 私の影響もあるのかもしれないのですが、そこに来ている高校生たちと会話をしていると、自然と、地域課題について自分たちで拾い上げたりしています。今年の8月に開催される「田辺市高校生議会」についても話題になり、トウザン荘に来ている高校生もエントリーしたと聞いています。
私的な表現になるのですが、高校生のうちにこういった経験してもらうことは、時限爆弾を設置するという感覚で、高校生のうちに何か地域のために行動する、地域のことを考えたという経験が、いつか故郷への思いとして爆発すると思います。時限爆弾を設置していっているという形になります。
私自身も20歳の成人の誓いで、「地域の役立つ人間になります」と宣言して、それが今、爆発しているんだなと思いますので、今の高校生たちも、将来、気が付けば、田辺にいる、戻ってきている、きっかけづくりをしていきたいと思っています。

<金岡教授>
坪井さんは、これまで自身のスポーツ店を拠点として、未来創造塾や地域の方々との繋がりの中で子供向けの体操教室やヨガイベント等を開催されていていますが、これまでの取組やその中で感じたことなど、少しご紹介ください。

<坪井さん>
同期の北川さんと協力して、子供向けの体操教室やヨガ教室等を実施しています。
お子さんの親御さんと直接接することで、子供がゲームばかりして、あんまり体動かさないからストレスで暴れる、といった声をリアル聞くことができ、小売業をしているだけでは、聞けなかったようなお話を直接聞けてよかったと思います。 今後も未来の子供たちに向けて、何か役立つことを進んでやりたいと思っています。
その他、店先で同期のブドウ屋さんがブドウを販売したり、キッチンカーに来てもらったり、ケーキ屋さんが来たりと、スポーツと関係ないことも色々と実施しています。
スポーツ用品店といえば、本気でスポーツをしている人たちがよく来る場所ではあるのですが、スポーツしない人も来やすいような、女性がもっと楽しみに来れるような集まり、例えば、お花のアレンジ教室や、羊毛フェルト講座、あと今は計画段階なのですが、親子で楽しむフルーツカッティングの講座も実施予定です。、スポーツ関係なく、幅広い年齢層の方に来てもらえる、親しんで楽しんでもらえる場所づくりをしていきたいなと思っています。
先ほどの講義の中でも、人口減少で地域コミュニティが少なくなっていくという話がありました。 私は、スポーツ関係なく幅広い年齢層の方に来てもらえる、親しんで楽しんでもらえる場所づくり、そういう地域コミュニティを生み出せる店作りをしていきたいと思っています。

<金岡教授>
9期生へのエールをお願いします。

塩士所長
先ほどお話をいただきました修了生のお二人が、お二人共、実際に、新しい価値やサービスの創出を実践されており、地域の問題解決につなげておられることに感心いたしました。
実際、修了生の多くの方が、地域に根づいた活躍をされているということが、地域活性化の成功事例として全国的にも注目されている理由なのかなというふうに改めて感じました。
先ほど、人口減少のお話もありましたが、実際、今、日本中どこも人が減っており、東京以外は人口が減少していくといった状況になっております。これに立ち向かっていくためにも、地域の賑わいの創出はとても重要であり、地域活性化のためには未来塾のような取組が必要であると改めて思うところでございます。
9期生の皆様におかれましては、同期、修了生との繋がり大事にし、2月の修了式まで、この「たなべ未来創造塾」を通して様々なことを吸収して、そして自分なりの地域課題の解決に向けたビジネスプランを作り上げ、そして実践していただけることを期待しております。

武藤支店長

ビジネスプランを作ることを目的にせずに、同期の中で議論しながら、ビジョンを共有し、地域課題を共有して、コミュニティを築いてい下さい。
もし、現時点でビジネスプランがある程度できている方は、安易に作り上げるのではなく、絞り出すように、ひねり出すように、少しでも良いものにするという想いを持って挑んでください。
そして、まず、動き出すことが重要です。 我々も関係団体として、他の関係団体さんと連携しながら、地域の一員として、そのビジネスプランの実行までお手伝いしていきたいと思っておりますので、本当に頑張っていただきたいと思っております。 ご健闘を祈っております。

<金岡教授>
これまでの歩みを踏まえ、次の10年に向けた展望をお聞かせください。

<真砂市長>
たなべ未来創造塾の今までを振り返ると、大きく間違ってはいなかった、正しい道を歩んでこれたと思っております。また、この節目の時期に、他の地域でも続々と地域再生塾が創設されていることから、やはり、全国的に人口減少を踏まえた共通課題についての認識がされており、同じような解決策を模索している状況であり、今後ますます塾の力が必要になるかと思います。
先の展望とは少し違いますが、共通課題を有するエリアが連携し、地域課題を共有しながら、その解決策を探っていく、そのような組織のある未来に向けて踏み出せる、そのような節目の年になればと思っております。

■協力・後援機関からのエール

  • この塾の強みであり魅力は、連携力ではないかと感じております。 9期生の皆様におかれましても、多種多様なメンバーがそろってらっしゃいますので、修了生を含めた塾生の方々と連携し、新たな商品や製品、取組が生まれることを願っております。

  • 協力機関として、ビジネスマッチングや情報提供等でも、我々のネットワークが皆様の活躍の一助になればと思っております。気軽にお声がけください。

  • たなべ未来創造塾をはじめ、田辺市内の事業所の方や、若い経営者の方とお話をした経験が、今、非常に役立っております。 9期生の皆様におかれましても、精一杯頑張っていただきたく思っております。

  • 新しいことを生み出そうしている場にいるということに、誇りに持っていただき、多くのことを学んでいただければと思っております。

  • 田辺市だけではなく、田辺市を中心に和歌山県全体を盛り上げていただきたいと思っております。

  • 修了生の方もおしゃっていましたが、第二の青春を楽しむつもりで、頑張っていただければと思っております。

  • これから8ヶ月間、ビジネスプラン練りに練ってください。修了式を楽しみにしております。

■閉会挨拶

田辺市副市長 木村晃和

熊本大学では、この未来創造塾の取組を、全国各地に広げていこうという動きになっており、そのため、金岡教授を中心とする熊本創生推進機構の体制を令和6年4月からさらに強化し、より積極的に取組を進めていく予定としております。
また現在、田辺市と天草市から政策研究員として職員派遣していただいておりますが、姉妹塾を実施しているほか自治体からも同様に派遣をいただくことを検討しておりまして、地域と熊本大学が共にwin-winとなることを目指して、引き続き取り組んでいきたいと考えています。
こうした動きはたなべ未来創造塾から始まっていると熊本大学では思っておりますので、益々の発展を期待しております。

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