日時:2024年09月07日 14:00~17:00
会場:田辺市役所 2F 大会議室
真砂市長を講師に迎え、これからの田辺市の新たなまちづくりについての講義をいただく中で、どこにビジネスチャンスがあるのかを探りました。
また、ケーススタディでは、第1期修了生の岡本和宜さん(㈱日向屋 代表)から、農業を通じた地域課題解決が、人口減少の歯止めにもつながる企業行動について学びました。
講師 田辺市長 真砂充敏
田辺市まちづくりの変遷
田辺市は平成17年5月に合併し、その後10年間「新市建設計画」に基づく市政運営を行ってきました。
この10年間は、いわば新田辺市の基礎づくりをおこなった10年間であったと言えます。そして、合併10周年の節目を新たなまちづくりに向けた転換期であると捉え、田辺市の新たな価値を創造していくという想いから、平成26年4月に「たなべ営業室」を設置、平成28年からは地域課題をビジネスの手法で解決していく人材の育成事業『たなべ未来創造塾』がスタートしました。
そして、住民票は無くとも田辺市に関わっていただける方々、「関係人口」の創出が重要になるとの想いから、「たなコトアカデミー」や「熊野リボーンプロジェクト」「ことこらぼ」といった関係人口施策を実施しており、たなべ未来創造塾の修了生の皆さんに協力をいただいだくことで、都市と地方の新たな関係性の創出に取り組んでいます。
「まちづくり」とは、「課題を解決すること」と「価値を創造していくこと」、この二つが重要であると言えます。価値の多様化、そして人口減少が進む時代では、民間の強みを活かし、地域課題の解決を図りながら企業利益に繋げていく、CSV(共通価値の創造)の考え方が重要であると言われており、地域課題の解決に取組むことはビジネスチャンスに繋がるといえます。
そういった意味では、今後、皆さんには多くのチャンスが訪れると思います。しかし、そのチャンスを掴めるどうかは皆さん次第です。
チャンスは無言で通り過ぎます。「今、チャンスですよ」とは誰も言ってくれません。
チャンスに気付くためには、常に「意識する」ことが必要です。そして、もう一つ重要なのことは、「チャレンジする」ことです。バットを振らなければヒットやホームランにはなりません、ストライク=チャンスを見逃さずにチャレンジする、そういった能力と心掛けが大事になります。
これから田辺市が進めるまちづくりの中に、皆さんにとってのチャンスがどこにあるのか、そのチャンスをどう捉え、チャレンジするか。こうしたことを意識し、積極的な活動をしていただきたいと思います。
これからのまちづくり
〇「田辺ONE未来デザイン」構想
今年度より市庁舎が移転し、旧庁舎跡地や市民総合センターを含めた田辺湾岸エリアをどのように活性化していくかがまちづくりの大きなテーマとなっています。
湾岸エリアには、天神崎や扇ヶ浜をはじめとする豊かな自然や、南方熊楠や植芝盛平、武蔵坊弁慶といった田辺三偉人に関連する施設や紀南文化会館など、多くの地域資源があります。また、今後は文里湾横断道路建設の予定もあります。こうした地域資源を活用しながら、湾岸エリアを中心としたまちづくりのデザインを今一度描き直そうとしています。そして、エリアとしての一体的な価値向上を図り、多くの方々に訪れていただくことで中心市街地だけでなく、市内周辺エリアの活性化にも繋げていきたいと考えています。
○周年期を活かしたまちづくり
令和5年度は「梅酒で乾杯条例制定10周年」、令和6年度は「熊野古道の世界遺産登録20周年」、「サンティアゴ・デ・コンポステーラ市(スペイン)との観光交流協定締結10周年」、令和7年度は「新田辺市発足20周年」、「みなべ・田辺の梅システムの世界農業遺産認定10周年」と、令和5年度から7年度にかけて田辺市にとって大きな節目の年が続いており、また令和7年度には「大阪・関西万博」が開催されます。
田辺市では、この3ヵ年を大きなチャンスとして、更なる市の価値向上を目指した各種事業を推進しています。
○梅酒ツーリズム
梅酒で乾杯条例制定10周年である令和5年度からの3年間、田辺市の主要農作物である「梅」を国内外に向けさらにPRしていきたいと考えており、「梅酒ツーリズム」を実施しています。絶景を楽しみながら梅酒を味わう「梅酒テラス」や、各店舗独自のクラフト梅酒を味わいながら味光路を巡る「梅酒飲み歩きの促進」等により認知度高め、全国、そして海外での需要の増加を図り、「梅酒の聖地、田辺」としてのブランディングを推進しています。
これまで、そしてこれからの田辺市のまちづくりについて講義をいただき、その後、市長は塾生一人一人と対話を行いました。講義、対話の中から田辺市の取組や考え方、塾生への期待等、自分たちを取り巻く環境について深く知る、そんな講義になりました。
講師 (株)日向屋 代表取締役 岡本和宜 氏(第1期生)
高校卒業後、隣町で約8年間サービス業に携わり、26歳の時に生まれ育った上芳養日向地区にて家業である農業を引き継がれた岡本さん。
岡本さんの地域課題解決への取組は、8年ほど前から増えだしたイノシシやシカ、サルによる農作物の鳥獣被害や、通学、通勤路にも出没する生活環境被害が切っ掛けでした。地域の農業や住民の生活を守りたい、その危機感だけだったと言います。
地元の若手農家5人で狩猟免許(わな猟)を取り、活動を始めた鳥獣害対策の効果で、次第に地域内の被害は減少していきます。しかし、地域のためとはいえ、野生動物を捕獲し廃棄する行為に、精神的な負担が強くなります。そんな中、自分たちがしたかった農業、次の世代に受け継いでほしい農業について再度考え、イノシシ、シカのジビエ活用に思い至りました。
地元である上芳養日向地区へジビエ加工処理施設を誘致し、地域課題であったイノシシ、シカを地域資源としての活用に取り組みます。ジビエ加工処理施設といえば全国的にも赤字施設が多く、運営が非常に難しいといわれる中、周辺地域を含め年間600頭ものイノシシ、シカを受け入れる施設として、経営も軌道に乗っています。
また、こうした鳥獣害対策と並行して、㈱日向屋を立ち上げ、地域で生産された梅や柑橘の加工販売や農作業の受託事業、借り入れた耕作放棄地の農地への再生、就農希望者の農業研修の受入、グリーンツーリズム事業など、“農業”という地域資源を最大限に活用した事業展開をし、多方面で高い評価を受けています。
更に、㈱日向屋が企画する収穫体験などのイベントを通して、年間約400人が上芳養日向地区を訪れ多くの関係人口が生まれているとともに、㈱日向屋で働きたいと、移住者も増えています。
「まちづくりは地元の人間だけで考える事ではない。地元の人間と関係人口が交わることで持続可能な地域創りになる」
人口減少が著しい地方であるからこそ、地域課題をビジネスによって解決する。そして、そこで出来た縁を大事にし、関係人口を巻き込んだ「まちづくり」を進めていけば、人口減少に負けない、持続可能なまちづくりが出来る、そう感じた講義となりました。
1日目
2024.07.20
2日目
2024.08.03
3日目
2024.08.17
5日目
2024.09.13