5日目

講義:「人口減少から生じる地域課題 小さな拠点が地域を変える ~人が集まるしくみづくり~」

日時:2024年09月13日  14:00~17:00

会場:田辺市役所 1階 多目的ホール

「人口減少」によって生じる「地域課題」、その地域課題の一部を解決している「小さな拠点」について学び、10年後の地域課題を考え、小さな拠点の意義について考察していきました。

また、ケーススタディでは、(一社)東彼杵ひとこともの公社 代表理事 森一峻 氏より、東彼杵(長崎県)の事例を通じて、地域の拠点づくりについて学びました。

■講義 人口減少から生じる地域課題 小さな拠点が地域を変える ~人が集まるしくみづくり~

講師 熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長 金岡省吾 教授

人口減少が起因となり引き起こされる地域課題

人口減少はなぜ起こるのでしょうか。
出生率の低下などによる「自然減」と高校や大学進学などで地域を離れる「社会減」が大きな要因となっています。

では、人口減少が進むと地域はどうなるのでしょうか。

日常品を買うお店やガソリンスタンド、路線バス…

地域で暮らすために必要な機能がどんどん失われ、地域で暮らしたくても暮らせなくなり、さらに人口減少を引き起こすという悪循環を生み出します。

また、人口減少によりこれまで成り立っていた仕事が成り立たなくなり、地域経済の縮小にも直結するのです。

こうした状況の中、地域住民自らが人口減少の進行により地域はどうなるのかを考え、行動していくことが求められており、多様なステークホルダーが共創しながら、地域課題とビジネスを両立することで持続可能な社会を形成しようという動きへと大きく変化しています。

しかし、これは、山村地域だけの問題ではありません。

都市部でも同様の地域課題を抱えており、大手企業もこうした課題解決に乗り出しているのです。

小さな拠点

国では、多様な地域課題を抱える地域において、地域住民自らが必要な生活サービスを維持・確保し、地域における仕事・収入を確保するため、「小さな拠点」の形成を推進しています。

例を挙げると、買い物難民やお年寄りの居場所がないといった地域課題を解決するため、地元有志により空き店舗を活用し、産直市場+サロンを立ち上げ、地域内外の人々が交流する拠点や地元高齢者の生きがい創出の場を運営している「中野の里づくり委員会」(島根県雲南市)。

基幹産業「林業」の衰退に伴い、人口の社会減・高齢化が進展し、地域活動が衰退しているという地域課題の負のスパイラルから脱却するため、農産物の加工・販売、食堂営業の収益を元に、介護認定のない高齢者を対象としたデイサービスの運営や独居老人への配食サービスなどを行っている「NPO法人夢未来くんま」(静岡県浜松市)など。

多くの小さな拠点が生まれはじめ、農林水産省においても「農村RMO」として農山漁村発イノベーションの創出に向けた取り組みを推進しています。

こうした地域・コミュニティに密着した「小さな拠点」の形成による持続可能な地域づくりは、人口減少社会における地域課題解決方法の一つであり、困難になっていく日常生活をどのように支援していくか、「共助」をどのようにデザインしていくかが、今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。

地域課題の中にたくさんのビジネスチャンスが転がっています。

しかし、このことに気付けるかどうか。
地域課題を解決する企業が地域から必要とされる。

人口減少の中で、地域企業が生き残れるかどうか、ここにヒントがあるのではないでしょうか。

■講義 「人と人がつながり、新しいことが生まれる拠点づくり~東彼杵の事例から~」

講師 (一社)東彼杵ひとこともの公社 代表理事 森一峻 氏

森さんは、コンビニエンス本社で経営を学んだあと、家業コンビニエンスストアを受け継いだものの、契約更新が難しいと通達がきます。こうした状況の中で、自分で仕事を創りださなければ地域に住み続けることができないと覚悟を決め、当時解体が決定していた旧千綿村農協米倉庫を1年間かけて交渉した結果、ついに活用できることになり、地域交流拠点「sorriso riso」を立ち上げられました。

一方、地域を見てみると仕事がないから人が離れる悪循環に陥っていました。

そこで、「人を集めるのではなく、集う」。

やりたい人がやりたいプロジェクトを実行しつつ、持続性のあるものにするため、ビジネスの視点で取り組んでいく。

こうした思いを形にするため、地元住民の皆さんや有志とともにワークショップ形式での作業をしながらリノベーションを進めていく中で、この場所で何かをしたいという仲間が増えてきました。

結果として、東彼杵という人口減少が進むまちで、「sorriso riso」を起点に人が自然と集まり始め、8年間で約25店舗が開業、500人以上が移住するまちへと大きな変貌を遂げています。

森さんは、現在、「sorriso riso」「uminoわ」の2つの交流拠点を運営管理しながら、リクルートや移住支援、人材育成等、人と人とをつなぐ取り組みをますます進化させています。

「無理に作り出そうとすることをやめて作り出されるまちへ」 
・一過性のものではなく継続的なものを
・MUSTではなくWANTを
・属人性と仕組み化の両立へ

持続可能なまちづくりを支える「小さな拠点」について、実例から多くを学ぶ講義となりました。

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