10日目

講義:超高齢化社会を考える

日時:2024年11月30日  14:00~17:00

会場:田辺市役所1階 多目的ホール

10日目の講義は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱ 社会政策部 主席研究員 岩名礼介氏を講師に迎え、「高齢化」という地域課題について学び、地域や民間企業は、どのように関わっていくのか、また何をビジネスチャンスとしていくのかを考察していきました。

■講義「超高齢社会の地域ビジネスの可能性」

講師 三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱ 社会政策部 主席研究員 岩名礼介 氏

超高齢化社会

今、日本は総人口の約1/3が高齢者という超高齢社会です。ここまで高齢化が進んでいる国は世界でも日本のみで、我々は前人未踏の難しい時代に生きており、諸外国で展開しているビジネスとは環境が大きく異なります。

みなさんの高齢者像とこれからの高齢者像

塾生の皆さんが幼少期に見てきた高齢者は、戦争を体験し、戦後復興の中で暮らしてきた世代ですが、今後の80代の高齢者は、バブル経済の中で20代を過ごしている世代であり、一括りに「高齢者」といっても、ひと昔前とは趣味嗜好も違います。

そのため、高齢者にアプローチする際に、これからは高齢者イメージの先入観を除去しなければビジネスを見誤る可能性があります。

また、高齢者や介護等の高齢者特有のニーズに関する仕事をしている方はもちろん、高齢者に関する仕事をしていないという方であっても、お客さんの多くが高齢化していくことから起こる「市場の高齢化」への対応、そして、高齢者の生活のサービスニーズが増えるという「高齢者ニーズの市場化」といった部分の双方にビジネスチャンスがあるということも意識する必要があります。

増える「ちょっとだけ」支援が必要な高齢者

2040年には85歳以上が人口の約10%を占める時代を迎えます。

85歳になると介護保険の認定率が50%を超えますが、認定されていない方は支援が不要ということではなく、生活の中でのちょっとした困りごとを抱えている方が多く、誰かの手助けを必要としています。

今までであれば、地域や家族の支えの中で生活できていたのですが、少子高齢化、高齢者のみの世帯の増加により、サービスに頼らざるを得ない時代になってきており、今後は更に、そういった高齢者が爆発的に増えることが予測されます。そういった状況では、ホームヘルパーサービスのような包括的なサービス形態ではなく、ちょっとした困りごとに対応する細分化された多様なサービス形態が求められていくのではないでしょうか。

「ついで」と「ながら」サービスを考える

しかしながら、小さい生活支援ニーズをサービス化し、価格設定をしていくと柔軟な対応が困難になっていくものです。むしろ地方では本業サービスの「ついで」に「ちょっとした困りごと」に対応する方が現実的ではないでしょうか。

例えば、東京都町田市の「でんかのヤマグチ」では、家電量販店等との価格競争による顧客獲得ではなく、徹底的な顧客サービスによる顧客獲得を行っており、電球一つであっても取付けから、電球回りの掃除まで徹底してして行うという地域密着型経営により、地域に必要とされる家電小売店となっています。

また、「とくし丸」は、移動販売で買物の機会を提供するビジネスを展開し「ながら」、毎回買い物に来る高齢者の様子を見守っている側面もあります。

これらの事業は、何も高齢者向けビジネスとして始まったわけではなく、全てが効率化していく社会のなかで、対応出来ない高齢者へ少し手を伸ばすところから始まっています。
ちょっとした気遣い、少しの配慮が地域課題の解決には重要となってくるのではないでしょうか。

地域共生社会

社会の困りごとやニーズを、現行の社会制度や固定化されたビジネス等で解決するのは、サラダジャー(瓶)に積み木を詰めるイメージに似ており、どうしても隙間が生れてしまいます。

特に、情報や支援が得られにくい高齢者は、その隙間に取り残され、生活しにくい環境が生れがちです。

しかし、地方で活躍する小規模事業者は、柔軟な対応が可能です。ビジネスは行政の制度に比べれば柔軟性があり、積み木の隙間を埋められる可能性もあります。

柔軟な思考を持ち、今あるビジネスを深く考え、独自の動きによって、その隙間を埋めることが出来るのが、地方の強み、地方だからこそ生まれるビジネスチャンスになるのではないでしょうか。

■講義の様子とグループディスカッション