日時:2021年12月04日 13:30~16:30
会場:田辺市役所 3階 第一会議室
人口減少のメカニズムを解明しながら、民間企業が人口減少の歯止めにどう関わることができるか、子育て世代の移入とビジネスをどう両立させることができるか、舟橋村や魚津市での取組事例などを通じて、コミュニティを武器としてCSVを実現する手法を学びました。
地方創生を一言で説明できますか。
そんな問いかけから講義がスタートしました。
地方創生は、一言で表現すると「人口減少」の歯止め。
では、どうすれば人口減少に歯止めをかけることができるのでしょうか。人口減少が進む理由には、大きく「社会減」と「自然減」があげられます。
年齢別の人口移動状況を見ると、高校を卒業し、大学や就職で都会に転出する「社会減」の影響が大きいという状況ですが、一度都会に出ることはむしろ重要なことであり、それよりも、学生の頃にいかに地域にふれ、将来帰ってきたいという人材を育成できるかが大切なのです。
30歳代前後になったときに「社会増」がみられます。つまり、地域に帰ってきていることを表しており、さらに0~4歳の移動を生み出し、子供を連れて帰ってきていることがわかります。
この世代に対し、もう一人産んでもよいと思える環境を作ることで、「自然増」につながり、人口減少の歯止めにつながる可能性があります。
そのため、子育て世代の移入が人口減少の歯止めの大きなカギを握っているのです。
千葉県流山市では、子育て世代に焦点を絞り、子育て賃貸住宅の提供や子育てしやすい環境づくりなどの施策に取り組むことで、その移入に大きな成果をもたらしています。
しかし、それは補助金施策により人の取り合いをするのではなく、重要な視点は「共助」。
旭化成ホームズや積水ハウスでは、コミュニティを武器とした子育て共助住宅の建設に取り組んでいます。地域がみんなで子どもを見守るコミュニティを形成することで、子育て世代にここに住みたいという感情が生まれているのです。大手メーカーやUR都市機構などもコミュニティを武器とした公共空間の再生に乗り出すなど、コミュニティビジネスの注目が高まり、こうした分野に進出する企業が増えている状況にあります。
次に舟橋村の子育て共助のまちづくりについて。
公共投資がトリガーとなり、民間の動きが活発になったことで、住宅開発が進み、子育て世代を中心に人口増加が進んでいたものの、近隣市町の地価が下落する中、舟橋村は下落率がゆるやかであったことから、近年では近隣市町と拮抗する価格となったことで、住宅開発が大きく鈍化しており、将来的には高齢化が進むであろうことが明らかとなりました。
こうしたことから、舟橋村では、産学官金が連携した子育て宅地開発に着手。地価に左右されるのではなく、安心して子育てできる環境・仕組みを作ることで、子育て世代を誘導しようと、モデルエリアを設けて、子育て賃貸住宅と子育て支援センター、公園を一体的に整備するプロジェクトを進めてきました。
その中でも、子育て支援センターについては、立派な施設や豪華な遊具といったハードではなく、ベテラン保育士が相談に乗るのでもありません。お母さん同士で相談しあえる“ゆるやかな”コミュニティを形成することで、多くの子育て世帯が訪れるようになっているのです。
公園については、こども公園部長の募集や月イチ園むすびプロジェクトなどを通じて、子どもたちが自ら公園づくりに関わることで、公園への愛着が生まれ、村への期待感につながろうとしています。
こうした取り組みが評価され、「第34回都市公園等コンクール」において最高賞の国土交通大臣賞を受賞、舟橋村総合戦略におけるKPI(数値目標)を見ると、子育て世代の転入世帯数や出生数などがほぼ達成できている状況であるといいます。
人口減少が進む中、子育て共助のまちづくりはどの自治体においても重要な視点であるに違いないのでしょう。
次に、魚津市「ココママ」の取組について。
フリーランスのママは、子育てと家事をこなしながら、仕事で活躍することが非常に難しいのが現状です。子どもに振り回され、他にも悩みは尽きない。
そのため、ココマカロンの大島さんは、フリーランスのママたちが活躍できる場を作ろうと、「ココママ」を結成。理想の働き方を後押しし、ママが輝ける街を目指して取組を始めました。
同じような悩みを抱えているママたちに呼びかけ、マルシェを開催したところ、大きな反響を呼び、今では多くの出展者、来場者が参加するようになり、大きなママコミュニティが形成されつつあるといいます。他にも勉強会や座談会、育児の助け合いなどを通じて、共助を実践しながら、新たな働き方を創造しているのです。
こうしたコンセプトと取組みが共感を呼び、多くのメディアにも取り上げられるなど、好循環が生み出され、魚津に住んでみたいという意識変容へとつながっているのです。
子育て世代の移入とビジネスとの両立。地方創生が叫ばれる中、人口減少という課題に立ち向かい、この課題を解決できる企業は必ず地域から必要とされるはずです。
そのために重要な視点は「コミュニティ」。
一見、手間がかかり、コストが合わないと思われがちな「コミュニティ」の形成が、共感を呼び、人を動かす。
結果として、企業利益につなげていくことが可能なのです。
また、コミュニティは、子育てに限ったことではなく、若者、高齢者、どの分野においても、これからの地域ビジネスにおいて大きなカギを握るのでしょう。
1916年に祖父が南新町に坪井商店を創業、その後、スポーツ用品専門店へと変化させています。
ツボ井スポーツが抱える企業課題は、少子高齢化による子どものスポーツ人口の減少と、クラブ時間及びクラブ数の減少。その結果、マーケットが大きく縮小し、それに伴い売上げが減少しています。
一方、地域課題を見ると、スポーツ時間の減少により体力の低下につながっています。
坪井さんは、この両方の課題を解決するために、たなべ未来創造塾3期生で親子リトミック教室を経営する高橋さんや、4期生でプロトレーナーの北川さんと連携し、子ども向けの体操教室を実施して、健康な子どもを増やそうと考えました。
その後、新型コロナウイルスが猛威を振るい、クラブ活動が軒並み中止となる中、体を動かすことのない子どもたちが増えている現状を目の当たりにし、4期生の北川さんの協力を得て、店舗内の特設スペースで体操教室を実施しました。こうした中、コロナ関連補助金があることに着目し、2階の倉庫をリノベーションし、コミュニティスペースを設置、月2回のキッズエクササイズを開催したところ、使いたいという人が増え、羊毛フェルトワークショップやヨガ教室など、これまで来店することのなかった層が訪れるようになっています。
しかし、売上げにはすぐに直結しないのです。
そのため、今後は一番のボリュームゾーンである高齢者をターゲットにした体操教室や既存のお客様とより深くコミュニケーションをとれるよう野球のグラブ磨き方お手入れ教室、今まで来店することのなかった層にアプローチするため、マルシェやフリマなどの開催も検討しています。
「コミュニティは武器になる。」地方の小売業が生き残るためには、重要なキーワードです。
しかし、いかに売上げに結びつけるか、坪井さんの挑戦はまだまだ続きます。
(株)onlyone benefitでは、子ども向けや子育て世代向けのセミナー・イベント運営をしつつ、住宅資金計画や住宅会社を紹介するおうちの買い方相談室を運営しています。
その企業課題は、お店(サービス)がまだまだ知られていない、地元ターゲット世代(20~30代)の人口が減ってきていることが挙げられます。
一方で、地域課題を見ると、地元にやりたい仕事がない、子育て世代の働く場所や選択肢が少ないことから、大学卒業後に地元に戻らない若者が多いということが挙げられます。
小山さんは、これら両方の課題を解決するため、ママの働き方の選択肢を増やし、ファミリーキャリアを応援するコミュニティ「ファミ☆キャリ」を創設しようと考えました。
具体的には、ママが働きやすい求人情報を紹介したり、ママの起業のサポート、ママ向け情報誌の発行、LINEを活用した情報発信など。
こうした取組を進めることで、田辺で子育てしやすい環境を整備しつつ、ママの働く場を提供することで世帯収入がアップし、結果として自社の顧客獲得につながると考えています。
たなべ未来創造塾修了後、たなべ未来創造塾修了生に協力を仰ぎながら、フリーペーパーを2回発行、メディアに大きく取り上げられるなど、注目度が高まっています。
しかし、課題も明らかになっています。
一人で取り組むには、負担が大きく無理がありました。
また、フリーペーパーを作るだけではコミュニティにつながらないのです。
そのため、今後は、ターゲットをさらに絞り込み、起業ママの応援に特化し、フリーペーパーでは起業ママの紹介や応援広告をしつつ、自社の1階空きスペースを活用し、起業ママのチャレンジの場を提供できないかと考えています。
「コミュニティは武器になる。」坪井さん同様、すぐに売上げに直結することは難しい。
しかし、一つ一つの積み重ねが将来、大きな力となることでしょう。
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