5日目

講義:日常生活支援(小規模多機能自治・小さな拠点)とビジネスとの両立

日時:2021年09月18日  13:30~16:30

会場:オンライン

たなべ未来創造塾5日目は、人口減少が進む中、全国で注目されている日常生活支援(小規模多機能自治・小さな拠点)とビジネスの両立について学びました。

講義 日常生活支援(小規模多機能自治・小さな拠点)とビジネスとの両立

講師 熊本大学熊本創生推進機構 金岡省吾 教授

地方創生の目的は、

  • 人口減少を和らげる
  • 地域の外から稼ぐ力を高めるとともに、地域内経済循環を実現する
  • 人口減少に適応した地域をつくる

人口減少で影響を受ける「日常生活」の領域に対応することで、

  • 人口減少に対応した地域をつくる

ということに近づくことができます。
では、人口減少で「日常生活」にどのような影響があるのでしょうか。

日常品を買うお店やガソリンスタンド、路線バス…
地域で暮らすために必要な機能がどんどん失われ、地域で暮らしたくても暮らせなくなり、さらに人口減少を引き起こすという悪循環を生み出します。

しかし、これは、山村地域だけの問題ではありません。
田辺市の中心市街地の高齢化率を見ると40%を超え、55%を超えるエリアも見受けられます。

また、地域全体として見ても、人口減少によりこれまで成り立っていた仕事が成り立たなくなり、地域経済の縮小に直結します。

そのため、下記のような手順で考える必要があります。

日常生活支援を地域課題として捉え、ビジネスで解決できる可能性があるものは、

  • 介護予防の拠点
  • 子どもの居場所づくり
  • 地域交通サービス
  • 空き家利活用事業
  • 地元産品加工販売
  • 買い物や弁当配達 など

これまで、たなべ未来創造塾や魚津三太郎塾、たかおか(呉西圏域)ビジネス協創研究所などの修了生からたくさんの事例が生まれてきました。
地域課題の中にたくさんのビジネスチャンスが転がっています。

しかし、このことに気付けるかどうか。

地域課題を解決する企業が地域から必要とされる。

地域企業が生き残れるかどうかの差は、ここにあるのかもしれません。

講義 地域課題解決と企業経営

講師 丸進商事(株)・福祉用具まるしん 代表取締役社長 塚田高史 氏

富山県高岡市で鉄鋼会社に資材を販売する会社を経営しつつ、2009年に「福祉用具レンタル・販売まるしん」として新たに福祉事業部門を立ち上げました

高齢化を背景に、福祉用具のニーズは拡大してきたものの、福祉用具の販売価格が、国の見直しにより引き下げられ、売上げが減少するなどの企業課題を抱えていました。また、社会保障費の急増に伴い、これまで介護サービスの対象となってきたものが、今後は切り離されていく状況にあります。

一方で、地域では高齢者に向けたサービスが不足し、買い物難民や交通弱者などの地域課題を抱え、その解決が求められていました。
そのため、地域事業者と連携し、買い物支援サービスを開始、国の支援策もあり、これまで順調に売り上げを伸ばしてきたのです。

しかし、開始から年月が経過し、国の支援策が下火となり、利益が少なくなったことやメインとなる福祉用具の仕事に支障をきたしてきたことなどから、事業に行き詰まりを感じ、2019年に買い物支援サービスから撤退するという苦渋の決断をしました。

こうした中、新しいビジネスモデルを模索するため、「たなべ未来創造塾」の姉妹塾にあたる「とやま呉西圏域共創ビジネス研究所」に参加し、講義の中で「たなべ未来創造塾」の事例を聞いたところ、塾生たちがつながって新しいビジネスを生み出していること、地域に根差したスモールビジネスを数多く生み出すことが地域の力となっていくことを聞き、こうしたことに感銘を受け、同じ塾生であった居宅介護事業所と業務提携、「福祉用具まるしん」の空いた建物を活用し、2020年7月に事業所を開設しました。

また、介護保険による福祉用具のレンタルと販売だけでは生き残っていけないとの思いから、「住宅改修まるしん」という新事業も立ち上げ、1年が経過し、順調に売り上げを伸ばしてきました。

さらに、コロナ禍という状況の中、異業種と連携しながら「健康」を武器としたECサイトを立ち上げるなど、今後は、地域課題を解決する企業へと転換し、高岡市を飛び出し、複数社と連携しながら、お互いの不足する部分を補っていければと考えています。

日常生活の中にビジネスチャンスがあります。地域課題にしっかりと目を向けながら、企業利益と両立できることを考えていきたいと思っています。

講義 地域の未来をみんなで創る

講師 有限会社中田 代表取締役 中田真寛 氏

有限会社中田は、1973年に白浜町で創業し、大規模なセレモニーホールを備えつつ、家族葬ニーズに応えるため、小規模なホールの整備も進めてきました。

しかし、これからの人口減少社会を見据える中で、葬儀業の悪いイメージを払拭し、働きやすい会社とすることが、スタッフのレベルをあげていくことへとつながり、結果として、「地域から信頼され続ける会社」になることができると考えています。

そのため、今後10年間の経営ビジョンと事業戦略を立てました。

まず、2019~2021年でスタッフ一人一人にミッションを浸透させるとともに、DXを活用しながら人事評価制度の導入、課題やマニュアルの共有など徹底した「見える化」に努めているところです。

2022年からは、次の段階として、DX等であぶりだした課題をもとに新たな戦略を構築し、2025年からの最終段階では、スタッフ一人一人が経営意識を持ち、ともに経営していく新たな会社へと変革していきたいと考えています。

未来塾で学んだこととして、

  • 自分の仕事は何なのか?
  • カテゴリーは何なのか?小分類は?中分類は?大分類は?
  • 大きな目標は?(ゴール・理念)

を自らが考えていくことが重要だと気付きました。

こうした中で、「地域とともに未来を創る」ことを大きな目標(ゴール・理念)と定め、たなべ未来創造塾修了式で「じぶんの供養」というビジネスプランを発表しました。

高齢化が進む中で、自分が死んだあと葬儀・供養をしてくれる人がいないという不安を抱えた高齢者が多いという地域課題に着目し、この課題を解決するため、生前に供養委託サービスを契約し、死後に弊社が責任をもって対応させていただくことで、「田辺なら死んだあとも眠る場所がある」という安心感を生み出すことができると考えました。

現在は、このプランの実現に向けて、さらにプラッシュアップしているところで、死後事務だけでなく、体が不自由になったあとの「生活支援」を含めたサービスを展開しようと考えています。買い物代行や掃除・洗濯・家事といった「生活支援」について、私と一緒に取り組んでくれる事業者の力が必要です。