<金岡教授>
湾岸地域の活性化に向けた「田辺ONE未来デザイン」構想の展望と、塾生に期待することは。
<真砂市長>
新庁舎移転後の跡地利用を含めて、田辺湾岸地域全体のデザインをどのようにしていくかということについて「田辺ONE未来デザイン」構想を通じて取り組んでいます。大きな目標を作ることは大事ですが、一方で、とにかくみんなで議論をして進めていくというプロセスも大事にしたいと思っています。そういう意味で塾生からも、何か提案をいただければと思います。
<金岡教授>
ツーリズムビューローの取組や今後の展望、塾生に期待することは。
<多田会長>
田辺市熊野ツーリズムビューローは、観光による地域づくり、まちづくりに取り組んでいます。2019年には着地型旅行業で5億2千万円の売上を記録しましたが、コロナ禍のため、ここ3年間は本当に厳しい状況でした。しかしながら、幸いにもインバウンドも回復してきていて、どうにか明るい未来が見えてきた状況です。これまでも、終了生が運営するゲストハウスとの連携や、コロナ禍でスタートした森林環境学習に関わるインタープリター養成講座には、大勢の修了生の方にも参加をいただいています。8期生の皆さんにも、観光面からのビジネスプランを立ち上げていただければと思います。
<金岡教授>
中心市街地を含め地域資源を活用した地域活性化への展望、塾生に期待することは。
<田上会長>
コロナ禍を経て、欧米系を中心に多くの外国人の方が訪れており、味光路でもたくさん飲食をしていただくようになってきていることは、地域にとっても、また、塾生や修了生の皆さんにとってもチャンスであると考えています。田辺観光協会としては、特に「食」と「海=シオゴリ」というテーマで、地域活性化に取り組んでいますが、「食」に関しては、田辺の特産品である梅を使った「梅酒」をより一層売り出すべく、本年の梅酒で乾杯条例の制定10周年を契機として、2025年の大阪万博に向けて「梅酒ツーリズム」という事業を立ち上げています。本年11月には味光路の各店舗に協力をいただきながら、クラフト梅酒を提供してもらうといった梅酒フェスのようなイベントも計画しています。塾生の皆さんにも、連携できるところでこうした取組にもぜひ参画していただきたいと思います。
<金岡教授>
新たな地域活性化の取組としての「シオゴリプロジェクト」とは。塾生に期待することは。
<多田会長>
かつて熊野詣に向かう前に、田辺の海水で心身を清めるために行われていた儀式が「潮垢離」です。これにちなみ「シオゴリプロジェクト」という事業をまちづくり会社の南紀みらい㈱と共に立ち上げ、熊野古道へ直行する観光客を扇ヶ浜に誘導することで市街地を回遊してもらい、飲食や宿泊を通して、中心市街地の活性化に繋げる取組を行っています。塾生の皆さんにも、ぜひ連携出来るところで、協力していただければと思います。
<金岡教授>
和歌山財務事務所として、塾生の新たな挑戦に対する支援は。
<田中所長>
財務事務所は全国各地に事務所があり、行政や金融機関、企業と密接な関係を持っていることから、こうしたネットワークを活かしたつなぎ役が出来ます。例えば、金融庁では、金融機関が、コロナで影響を受けた事業者に対し、実情に応じた適切で効果的な支援や、地域活性化に向けた支援に取り組んでいただけるよう進めています。そうした中で、塾生の皆さんが資金調達の方法などを個別の金融機関ではなく複数の金融機関に聞いてみたい、また、塾生全員で金融の話を聞いてみたいといったような場合があればお繋ぎできるほか、他地域の地域活性化の事例を紹介することも可能です。何かお手伝い出来ることがあればと考えているので、「こういうことが出来ないか」など、気軽に相談していただければと思います。
<金岡教授>
日本政策金融公庫田辺支店として、塾生の新たな挑戦に対する支援は。
<武藤支店長>
公庫の役割としては、やはり金融支援です。第1期生から第6期生まで、ビジネスプランを実行された案件のうち、約6割を田辺支店として支援させていただいており、追加融資の事例もあります。当然、修了生ではない方の支援も行っていますが、修了生のビジネスプランとコラボ出来るような案件であれば、マッチングも実施させていただいています。
また、修了式で発表されるビジネスプランはまだまだアイデア出しの域を出ないものもありますが、そうしたビジネスプランのブラッシュアップを支援していくことについても、公庫に求められる役割であると考えています。この点については、田辺支店の職員も第6期生として参加させていただき、「ビジネスプランのブラッシュアップ」「金融ワンストップ窓口」「塾生のビジネスプランの情報発信」といった3本柱の支援をプランとして構築し、実行しています。公庫としては、引き続きこうした取組を通して、地域活性化に寄与していきたいと考えています。
<金岡教授>
神島高校「神島塾」とたなべ未来創造塾の連携について。
<真砂市長>
神島塾については、未来創造塾の修了生の講演を聞いて、高校生ならではの視点で地域のことを考えてくれていることは、大変心強いと感じています。
実は、神島高校だけではなくて田辺高校でも総合学習の中で地域への貢献、SDGsなども含めていろいろと考えてくれています。
こうした地域を深く知り、地域について考える機会となる高校との連携については、進学等で田辺から出ることは仕方ないとしても、その後いかに戻ってきてもらうかを考える時に、一つの有効な取組であると思っています。
<金岡教授>
高校生ビジネスプラン・グランプリへの挑戦を含め、神島高校「神島塾」の取組への感想は。
<武藤支店長>
公庫が主催している高校生ビジネスプラン・グランプリについては、日本の未来を担う若者の創業マインドの向上を目的として、2013年から全国の高校生を対象に実施しています。
これまで10回開催されており、前回の第10回記念大会では、参加455校、応募総数4,996校にのぼっています。神島高校は2015年(第3回)から毎年参加いただき、素晴らしい実績を上げられていますが、第10回記念大会では、全国のベスト100に選出された近畿7校のうちの1校として、関西大学ミライズでビジネスプランを発表されました。私も発表を聞きましたが、神島高校のビジネスプランが、最も地域課題の解決を意識して考えられていたと思います。
神島高校「神島塾」は、ビジネスプラン・グランプリに参加するために実施されているものではなく、地域について学ぶ集中講座であって、地域課題をビジネスで解決する手法は、たなべ未来創造塾とコンセプトが全く同じであると思います。
話題提供にもありましたが、「社会減」の対策としても高校生が地域について深く学ぶことは非常に重要であり、たなべ未来創造塾と関わることで、地域の良いところや課題を認識しながら、地域の“かっこいい大人”とも出会っているところが素晴らしいと思います。
今年の「神島塾」第1回目では、生徒に対して「将来暮らすなら都会がいいか、田辺がいいか」といった問いかけがありました。当然ながら大半が都会と答えると思いましたが、予想に反してほとんどの生徒が田辺で暮らしたいとの回答でした。その理由としては「風が気持ちいい」「居心地がいい」「癒される」「食べ物がおいしい」といった感覚優位なもので、「便利だから」や「流行に乗り遅れないために」といった意識で都会を選ばないことに、非常にうれしさを感じたところです。
<金岡教授>
人口減少を止める従来の高大連携とは異なる高校連携についての感想は。
<大谷理事>
これまでの高校との連携といえば、大学に来て欲しい狙いがあっての取組でしたが、熊本大学が取り組んでいるのは地域を活性化させるための連携です。文部科学省の会議などで紹介すると大変驚かれます。今、大学では学生に動機付けを与えることが課題となっています。この点、未来創造塾の手法には、大学としても学ぶところがあると感じています。また、高大連繋に限らずですが、いろんな方々が関わる多様性の中で地域のことを考える未来創造塾のようなシステムは、非常に重要だと改めて思うところです。
<金岡教授>
いよいよ修了生100名の大台が見てきた中、塾生、修了生に期待することは。
<真砂市長>
たなべ未来創造塾を立ち上げた当初は、5年で修了生が60名、そのうち、10名乃至20名がその気になってくれたらという気持ちでありましたが、今では7期までで修了生が82名、しかもビジネスプランの実行率が高く、さらには関係人口創出の取組なども含めて、いろんな事業にも関わって波及効果を及ぼしていただいていることが、本当にありがたいと思っています。
8期生の皆さんにも、ぜひその一翼を担っていただきたいと思います。