2日目

開講式

日時:2023年08月05日  14:30~17:00

会場:田辺市役所別館 3階 大会議室

田辺市と熊本大学熊本創生推進機構の共同主催により、地域課題をビジネスで解決する人材とビジネスモデルの創出を目指した「たなべ未来創造塾第8期」開講式を開催し、令和6年2月までの約8ヶ月にわたる取組がスタートしました。

■開会挨拶

たなべ未来創造塾長・田辺市長 真砂充敏

第8期生の皆さんを迎え、今年もこうしてたなべ未来創造塾開講式を迎えられたこと、本当にうれしく思います。

また、たなべ未来創造塾の取組は、関連する「たなコトアカデミー」や「熊野リボーンプロジェクト」、「ことこらぼ」といった関係人口創出事業も含めて、シティプロモーションアワード(2021年)の受賞やSDGs未来都市認定(2022年)といった全国的にも高い評価をいただいておりますが、これもひとえに関係機関の皆様のご支援の賜物であると、改めて厚く御礼申し上げます。

さて、塾の運営にご協力をいただいている熊本大学が中心となり、熊本県内でも5つの市、1つの広域地域で姉妹塾が立ち上がっていますが、今後は石川県などでも未来創造塾がスタートする予定であると伺っています。こうした姉妹塾の取組がより一層広がり、互いが切磋琢磨して地方創生の取組が出来ればと思っています。

8期生の皆さんには、2月の修了式までの長丁場となりますが、塾を通して様々なことを吸収し、自分なりの地域課題の解決に向けたビジネスプランを作り上げ、実践していただけることを期待しています。

熊本大学理事・副学長 大谷 順

協同主催者として、本日、たなべ未来創造塾第8期の開講式を迎えられたこと、うれしく思っています。

先ほど真砂市長もおっしゃられたように、熊本県内でも、このたなべ未来創造塾の取組を起点として、5つの市(八代市、天草市、玉名市、菊池市、山鹿市)、一つの広域地域(阿蘇)で未来創造塾が立ち上がっています。 

昨年度は、熊本で未来創造塾の合同講義を開催させていただきましたが、地域を超えた情報共有を行っていく、正に「共創の場」が非常に大切であると改めて感じたところです。

今後も引き続き、関係の皆様と熊本大学が連携することで、たなべ未来創造塾がより発展し、さらに田辺市が活性化していくことを期待していますし、大学としてもその一端を担わせていただきたいと思っています。

■来賓挨拶

近畿財務局和歌山財務事務所長 田中 好 氏

財務事務所は、地方公共団体、金融機関、民間企業と密接な関係を持ち、この三者のつなぎ役として地域貢献を果たすべく、これまでも各地域の活性化に向けた取組を支援させていただいています。共通の課題を持つ地域同士を繋げることや、地域活性化に不可欠な「産学官金」がそれぞれの役割のもとに情報交換を行う場の提供などにも携わっております。

たなべ未来創造塾の取組は、地域活性化の成功事例として、全国的に注目を集めておられます。また、毎期、塾生の皆さんは地域に対して熱い想いを持っておられ、期を超えた修了生との強い繋がりもあり、非常に素晴らしい取組をされていると感じています。

第8期生の皆さんには、本日が夢の実現への第一歩となりますが、これからの活躍を期待しています。

日本政策金融公庫南近畿地区統轄 田上 和彦 氏

私自身、たなべ未来創造塾の一ファンでございました。

昨年参加させていただいた第7期のオリエンテーションと開講式で火が付き、11月の熊本における合同講義で沼にはまり、さらには本年2月の修了式でどっぷりと浸かってしまいました。

今回の第8期においても、先日のオリエンテーションに参加させていただきましたが、自己紹介の際の塾生の皆さんの熱い想いを聞く中で、来年2月の修了式には、素晴らしいビジネスプランを練り上げていただき、立派なプレゼンテーションをしていただけるだろうと確信しております。

第8期生の皆さんにとって、たなべ未来創造塾における経験や学びが実り多きものとなりますよう祈念しています。

■オリエンテーション~たなべ未来創造塾が目指すもの~

講師:熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長 金岡 省吾 教授

私は大学でランドスケープ(造園)について学びました。その知識を生かしつつ、シンクタンクにて経営学(マーケティング,消費者行動)を融合させながら,高速道路の計画や地域活性化に対する処方箋やノウハウを提案することができ,地域活性の新たな方法論を手に入れました。新たな武器を手に入れたと浮かれていた時に、第三者が作ったプロジェクトが動かないという事態が生じました。提案するだけでなく,動く仕組みを作ることが必要だと実感しはじめ,富山大学に転身しました。

こうした中、人口減少社会を迎え、企業が地域課題の解決に取り組むことで地域を活性化する時代になり、単に提案するだけでなく,自ら動く企業が噴出するシステムが必要なんだと,富山大学において地域再生塾を立ち上げ、そのお陰で,田辺市の皆さんと繋がることになり、田辺のご縁が熊本へ波及し,2年前に熊本大学にIターンし,現在に至ります。

未来創造塾を進めている中で、修了生=かっこいい大人が取り組んでいる面白い仕事が地域の課題を解決していると、多方面から注目をされ始めました。

例えば,日本経営協会が,中小企業白書に書かれている内容を事業展開していると,執筆依頼がありました。中小企業白書に,中小零細企業の生き残り策は,労働生産性や規模拡大ばかりでなく,企業が持続的に地域の課題解決に取り組む経営戦略を語れることが重要であり,そのために、支援機関と自治体が連携する経済モデルとして、動かすシステムが必要だと示されていますが、正に未来創造塾がその形のようです。

また,新しい政策として農村RMOを展開する農林水産省も,未来創造塾の取組が面白いと注目をいただいています。こうした中、次の国土形成計画(第3次計画)の策定に際して示されている,「生活圏の再構築」「地域を支える人材の確保・育成」といった論点にも、未来創造塾の取り組みが合致しています。

国土形成計画の次の計画でも注目されている関係人口の創出は,既にたなべ未来創造塾ではその取り組みを先導しています,しかし,ここに安住してはいけません。国の政策にはその先が触れられており,遠隔医療,IT農業といった新しい技術を取り入れ活用し、地域の力を強めていくことが示されています。関係人口と動きと,1歩先の処方箋を融合することが必要です。高校との連携も注目されています。田辺市では神島高校と連携されているように、熊本でも天草高校や八代高校、大津高校など,多くの高校との連携がスタートし始めました。神島高校の動きは,全国を先導する取り組みですが,熊本では高校生だけでなく、先生の意識までも変わりつつあり,1歩先をあゆみ始めました。

シンクタンクの経験としてお話ししましたが,国の処方箋を実際に動かすとなると壁が生じ、壁の打破には,未来創造塾が地域にあるかどうかで大きな差が生じると思います。未来創造塾を核とした地域活性化は,国の計画ともシンクロする状況になり,未来創造塾に取り組み地域には,一歩先を示す処方箋を地域で実現する可能性を潜在しています。これらを含みながら,たなべ未来創造塾は、1歩上を目指し,今後取り組んでいきたいと思います。

先に申し上げているように、未来創造塾の取組が、本当に少しずつですが地域を変え始め、様々なところで波及効果を生み出し、国も計画の中で塾のような取組が必要であると書いています。こうした動きを支えるのは塾生である皆さんです。ぜひ、一緒に頑張りましょう。

田辺市たなべ営業室 入口直史

様々な地域課題の背景にあるのは人口減少で、田辺市は全国平均よりも早いスピードで進行しています。

人口減少は、生活関連サービスの縮小や空き家・空き店舗の増加、耕作放棄地の増加、学校の統廃合など、多様な地域課題を引き起こし、そのことが生活利便性の低下や地域の魅力低下に繋がってさらに人口減少を加速させます。

このことに対して具体的にどのような手を打っていくか模索する中で、ご縁により、当時、富山大学で実践されていた金岡教授に「行政職員が自ら考え汗をかく覚悟」を条件として、ご指導いただくこととなりました。

金岡教授の指導の中で、特にこれからの時代に重要とされる地域課題をビジネスで解決することで地域と企業が共通の価値を創造するCSVという考え方を教わり、これを具体的に実践するために「産官学金」が一体となって塾生を支援する体制を構築し、地域課題の解決に向けた人材育成事業「たなべ未来創造塾」を平成28年にスタートさせました。

これまで7期82名の修了生を輩出し、多様なローカルイノベーションが生まれ、全国的から注目を集めるまでに至っています。

その理由としては、

①71.4%というビジネスプラン実行率の高さ(6期70名)

②修了生同士の期を超えた繋がりから新たなイノベーションが生まれる(ビジネスの自走)

たなべ未来創造塾では、何も大きなビジネスを生み出そうとしているのではありません。

一つ一つが小さくても地域に根差した沢山のビジネスが生まれ、繋がることで、点が面に広がり、地域の大きな力になっていく、このことに皆で力を合わせて取り組んでいるのが、たなべ未来創造塾です。

8期生の皆さんには、講義を通して、地域課題の中から自身の強みを活かして取り組めるビジネスチャンスを見い出してもらいたいと思います。

■塾生自己紹介

参加動機や抱負、企業情報や事業内容等について、各自1分で自己紹介を行いました。

■トークセッション:テーマ「これからの時代に求められる価値創造とは」

パネリスト
真砂 充敏(たなべ未来創造塾長・田辺市長)
大谷 順(熊本大学理事・副学長)
田中 好 氏(近畿財務局和歌山財務事務所長)
武藤 純司 氏(日本政策金融公庫田辺支店長)
多田 稔子 氏(田辺市熊野ツーリズムビューロー会長)
田上雅人 氏(田辺観光協会長)

コーディネーター
金岡 省吾 教授(熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長)

<金岡教授>
たなべ未来創造塾を核とした取組がシティプロモーションアワード受賞やSDGs未来都市認定を受け、関係者が一堂に会するイベントの開催、またSDGs実践集を発刊された感想は。

<真砂市長>
たなべ未来創造塾が多方面から評価をいただいていることは本当にありがたいと思っていますし、修了生の取組がたくさん受賞されていることを見ましても、大変うれしく思います。こうした状況を、これからも関係の皆様と一緒に作っていければと考えています。

<金岡教授>
姉妹塾の広がりも含め、たなべ未来創造塾への感想は。

<大谷理事>
皆様もご存じのとおり、金岡教授のもと、熊本県内でもたなべ未来創造塾に学びながら、いくつかの市で未来創造塾が立ち上がっています。私自身は山口県萩市出身で、今回はじめて和歌山県に来させていただきましたが、田辺市は海があって山があって、人口規模も同じぐらいで、非常に雰囲気が似ていて、親近感を感じています。そしてもう一つ親近感で言うと、田辺市と同じく九州、熊本でも林業が盛んで、この分野の起業家やベンチャーについては熊本大学でも注目をしています。田辺市の事例にはいろいろと学ぶ点がありますので、熊本でも情報共有していきたいと考えています。

<金岡教授>
塾の運営をはじめ大変お世話になっている。これまでのたなべ未来創造塾への感想は。

<武藤支店長>
現在、9月頃の配信に向け準備を進めているところですが、日本政策金融公庫ホームページの地域活性化に関する取組を紹介する動画配信コーナーにおいて、田辺支店としては、今回、たなべ未来創造塾を取り上げさせていただき、真砂市長にもメッセージを寄せていただきました。また、今年の4月には、金岡先生、鍋屋政策研究員(田辺市たなべ営業室参事)に公庫役員や都内の支店長向けに「地方創生」をテーマに講演をいただく中で、たなべ未来創造塾と連携する田辺支店についても触れていただきました。こうしたご対応に感謝しています。

たなべ未来創造塾は、「地域課題の解決」をキーワードとして、講師の先生方が地域の課題や、対策を講じない場合の田辺市の将来像を客観的に示され、それを受けて塾生の皆さんが地域のことを自分事として考える点が素晴らしいと感じています。

また、今回は第8期ということで、塾生の皆さんは同期の繋がりだけではなく、多くの修了生との繋がりも出来ることから、こうしたネットワークも非常に重要であると思います。 

公庫の経営方針には「地域活性化への取組」がありますが、たなべ未来創造塾との連携の中でこのことをより強く意識するとともに、私自身、地域課題の知識が蓄積されてきておりまして、一金融機関職員としても非常にプラスの経験になっていると感じています。

<金岡教授>
これまでも講義だけでなく、発表に向けた演習や塾生のヒアリングにも参加をいただいている。たなべ未来創造塾への感想は。

<田中所長>
私もたなべ未来創造塾に“ハマった”一人です。前回、第7期の修了生が言われた「田辺の魅力は人だ」という言葉が印象に残っていますが、たなべ未来創造塾は、人と人との繋がりの大切さも含めて、こうしたことを改めて感じさせてくれる取組であると思います。地域課題の解決や地域資源を活かすために、地域で何かできないかという塾生の皆さんの熱い想いが先ずあって、ビジネスプランは違っても共通の課題認識のもと意見交換をする中で、さらに磨きのかかったビジネスプランが生まれること、また、何よりもこれまでの修了生を含め業種を超えた強い繋がりの中で、一人一人の取組がさらに広がっていくことが素晴らしいと感じています。また、金岡先生をはじめ講師の皆様や関係機関、田辺市が一つになって塾生をサポートする運営も素晴らしい点であると思います。

財務事務所としては、各地で地域活性化の取組への支援を行っています。こうした取組が持続的な取組となるためには経済的な部分ももちろん重要ですが、地域の課題や向かうべき姿について、その地域の出来るだけ多くの人が共有し協働していくことが大切であり、この点についても、たなべ未来創造塾の取組は素晴らしいと感じています。

<金岡教授>
これまでのたなべ未来創造塾への感想は。

<多田会長>
私は、たなべ未来創造塾応援団#0001を自負しています。今日のように注目や成果が出る前から、この塾の取組は素晴らしいことだと思い続けていますし、最初から講師として携わらせていただいていることを光栄に思っています。田辺市の取組の中で、特にたなべ未来創造塾と教育委員会が実施している語り部ジュニアの事業は素晴らしく、このような投資がまちづくりには最も効果的であると考えています。真砂市長にはぜひこうした取組を末永く続けていただきたいと思います。

<金岡教授>
これまでのたなべ未来創造塾への感想は。

<田上会長>
未来創造塾には講師として関わらせていただいていますが、私自身もこれまで自分がやっている米作りや事業が、実は地域課題の解決に繋がっていると金岡先生から教えていただいた一人です。未来創造塾ではこれまで成功事例がたくさん創出されていますが、一つ例を挙げれば、田辺駅前では空き店舗がほとんど無くなり、その効果は周辺の商店街にも広がりつつあります。皆さんの力でこうした事例をもっと作っていけば、もっと良い町になっていくはずですので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。また、自分のやりたいこと=夢は皆に伝えることで広がり、新しい価値を生み出すことに繋がると思います。

<金岡教授>
湾岸地域の活性化に向けた「田辺ONE未来デザイン」構想の展望と、塾生に期待することは。

<真砂市長>
新庁舎移転後の跡地利用を含めて、田辺湾岸地域全体のデザインをどのようにしていくかということについて「田辺ONE未来デザイン」構想を通じて取り組んでいます。大きな目標を作ることは大事ですが、一方で、とにかくみんなで議論をして進めていくというプロセスも大事にしたいと思っています。そういう意味で塾生からも、何か提案をいただければと思います。

<金岡教授>
ツーリズムビューローの取組や今後の展望、塾生に期待することは。

<多田会長>
田辺市熊野ツーリズムビューローは、観光による地域づくり、まちづくりに取り組んでいます。2019年には着地型旅行業で5億2千万円の売上を記録しましたが、コロナ禍のため、ここ3年間は本当に厳しい状況でした。しかしながら、幸いにもインバウンドも回復してきていて、どうにか明るい未来が見えてきた状況です。これまでも、終了生が運営するゲストハウスとの連携や、コロナ禍でスタートした森林環境学習に関わるインタープリター養成講座には、大勢の修了生の方にも参加をいただいています。8期生の皆さんにも、観光面からのビジネスプランを立ち上げていただければと思います。

<金岡教授>
中心市街地を含め地域資源を活用した地域活性化への展望、塾生に期待することは。

<田上会長>
コロナ禍を経て、欧米系を中心に多くの外国人の方が訪れており、味光路でもたくさん飲食をしていただくようになってきていることは、地域にとっても、また、塾生や修了生の皆さんにとってもチャンスであると考えています。田辺観光協会としては、特に「食」と「海=シオゴリ」というテーマで、地域活性化に取り組んでいますが、「食」に関しては、田辺の特産品である梅を使った「梅酒」をより一層売り出すべく、本年の梅酒で乾杯条例の制定10周年を契機として、2025年の大阪万博に向けて「梅酒ツーリズム」という事業を立ち上げています。本年11月には味光路の各店舗に協力をいただきながら、クラフト梅酒を提供してもらうといった梅酒フェスのようなイベントも計画しています。塾生の皆さんにも、連携できるところでこうした取組にもぜひ参画していただきたいと思います。

<金岡教授>
新たな地域活性化の取組としての「シオゴリプロジェクト」とは。塾生に期待することは。

<多田会長>
かつて熊野詣に向かう前に、田辺の海水で心身を清めるために行われていた儀式が「潮垢離」です。これにちなみ「シオゴリプロジェクト」という事業をまちづくり会社の南紀みらい㈱と共に立ち上げ、熊野古道へ直行する観光客を扇ヶ浜に誘導することで市街地を回遊してもらい、飲食や宿泊を通して、中心市街地の活性化に繋げる取組を行っています。塾生の皆さんにも、ぜひ連携出来るところで、協力していただければと思います。

<金岡教授>
和歌山財務事務所として、塾生の新たな挑戦に対する支援は。

<田中所長>
財務事務所は全国各地に事務所があり、行政や金融機関、企業と密接な関係を持っていることから、こうしたネットワークを活かしたつなぎ役が出来ます。例えば、金融庁では、金融機関が、コロナで影響を受けた事業者に対し、実情に応じた適切で効果的な支援や、地域活性化に向けた支援に取り組んでいただけるよう進めています。そうした中で、塾生の皆さんが資金調達の方法などを個別の金融機関ではなく複数の金融機関に聞いてみたい、また、塾生全員で金融の話を聞いてみたいといったような場合があればお繋ぎできるほか、他地域の地域活性化の事例を紹介することも可能です。何かお手伝い出来ることがあればと考えているので、「こういうことが出来ないか」など、気軽に相談していただければと思います。

<金岡教授>
日本政策金融公庫田辺支店として、塾生の新たな挑戦に対する支援は。

<武藤支店長>
公庫の役割としては、やはり金融支援です。第1期生から第6期生まで、ビジネスプランを実行された案件のうち、約6割を田辺支店として支援させていただいており、追加融資の事例もあります。当然、修了生ではない方の支援も行っていますが、修了生のビジネスプランとコラボ出来るような案件であれば、マッチングも実施させていただいています。
また、修了式で発表されるビジネスプランはまだまだアイデア出しの域を出ないものもありますが、そうしたビジネスプランのブラッシュアップを支援していくことについても、公庫に求められる役割であると考えています。この点については、田辺支店の職員も第6期生として参加させていただき、「ビジネスプランのブラッシュアップ」「金融ワンストップ窓口」「塾生のビジネスプランの情報発信」といった3本柱の支援をプランとして構築し、実行しています。公庫としては、引き続きこうした取組を通して、地域活性化に寄与していきたいと考えています。

<金岡教授>
神島高校「神島塾」とたなべ未来創造塾の連携について。

<真砂市長>
神島塾については、未来創造塾の修了生の講演を聞いて、高校生ならではの視点で地域のことを考えてくれていることは、大変心強いと感じています。

実は、神島高校だけではなくて田辺高校でも総合学習の中で地域への貢献、SDGsなども含めていろいろと考えてくれています。

こうした地域を深く知り、地域について考える機会となる高校との連携については、進学等で田辺から出ることは仕方ないとしても、その後いかに戻ってきてもらうかを考える時に、一つの有効な取組であると思っています。

<金岡教授>
高校生ビジネスプラン・グランプリへの挑戦を含め、神島高校「神島塾」の取組への感想は。

<武藤支店長>
公庫が主催している高校生ビジネスプラン・グランプリについては、日本の未来を担う若者の創業マインドの向上を目的として、2013年から全国の高校生を対象に実施しています。

これまで10回開催されており、前回の第10回記念大会では、参加455校、応募総数4,996校にのぼっています。神島高校は2015年(第3回)から毎年参加いただき、素晴らしい実績を上げられていますが、第10回記念大会では、全国のベスト100に選出された近畿7校のうちの1校として、関西大学ミライズでビジネスプランを発表されました。私も発表を聞きましたが、神島高校のビジネスプランが、最も地域課題の解決を意識して考えられていたと思います。

神島高校「神島塾」は、ビジネスプラン・グランプリに参加するために実施されているものではなく、地域について学ぶ集中講座であって、地域課題をビジネスで解決する手法は、たなべ未来創造塾とコンセプトが全く同じであると思います。

話題提供にもありましたが、「社会減」の対策としても高校生が地域について深く学ぶことは非常に重要であり、たなべ未来創造塾と関わることで、地域の良いところや課題を認識しながら、地域の“かっこいい大人”とも出会っているところが素晴らしいと思います。

今年の「神島塾」第1回目では、生徒に対して「将来暮らすなら都会がいいか、田辺がいいか」といった問いかけがありました。当然ながら大半が都会と答えると思いましたが、予想に反してほとんどの生徒が田辺で暮らしたいとの回答でした。その理由としては「風が気持ちいい」「居心地がいい」「癒される」「食べ物がおいしい」といった感覚優位なもので、「便利だから」や「流行に乗り遅れないために」といった意識で都会を選ばないことに、非常にうれしさを感じたところです。

<金岡教授>
人口減少を止める従来の高大連携とは異なる高校連携についての感想は。

<大谷理事>
これまでの高校との連携といえば、大学に来て欲しい狙いがあっての取組でしたが、熊本大学が取り組んでいるのは地域を活性化させるための連携です。文部科学省の会議などで紹介すると大変驚かれます。今、大学では学生に動機付けを与えることが課題となっています。この点、未来創造塾の手法には、大学としても学ぶところがあると感じています。また、高大連繋に限らずですが、いろんな方々が関わる多様性の中で地域のことを考える未来創造塾のようなシステムは、非常に重要だと改めて思うところです。

<金岡教授>
いよいよ修了生100名の大台が見てきた中、塾生、修了生に期待することは。

<真砂市長>
たなべ未来創造塾を立ち上げた当初は、5年で修了生が60名、そのうち、10名乃至20名がその気になってくれたらという気持ちでありましたが、今では7期までで修了生が82名、しかもビジネスプランの実行率が高く、さらには関係人口創出の取組なども含めて、いろんな事業にも関わって波及効果を及ぼしていただいていることが、本当にありがたいと思っています。

8期生の皆さんにも、ぜひその一翼を担っていただきたいと思います。

■協力・後援機関からのエール

  • たなべ未来創造塾の特徴としては、地域課題の解決に徹底して取り組むことと合わせて、同期生や修了生との強い繋がりがあること、また、単なる繋がりに止まらず、コラボして新たな事業を起こされている事例があることも大きな特徴として挙げられると思います。8期生の皆さんは、先ずは自身のビジネスプランの実行を目指されると思いますが、その先を見据え、塾生、修了生との縦横の繋がりや他地域との繋がりも意識した取組にもぜひチャレンジしていただきたいと思います。
  • 熱い想いで取り組む塾生の皆さんを応援しています。やる限りは必死になって取組を継続していただきたいと思います。
  • 8期生の皆さん、これからしっかりと頑張ってください。期待しています。
  • 人材を育てるということは本当に大変なことだと感じています。8期生の皆さんには、塾の名のとおり、これから未来を創造していって欲しいと思います。
  • 塾生の皆さんの自己紹介を聞かせていただいて、それぞれが地域のことを考えて、取組を計画されているなと感じています。それぞれの強みを活かし、地域課題の解決に向け、力強く取り組んでいただきたいと思います。

■閉会挨拶

熊本大学理事・副学長 大谷 順

未来創造塾の取組は、田辺市をはじめ熊本県、また、富山県など、どんどん広がりを見せていますが、やはり関係機関の皆様にご支援をいただいているところが大きいと感じています。

熊本大学としては、たなべ未来創造塾がさらに発展をしていくよう、取組を進めてまいりますので、今後も引き続き関係機関の皆様のご協力のほど、よろしくお願いいたします。

そして第8期生の皆さんの活躍を期待しています。