7日目

7日目のテーマは「空港型地方創生への挑戦」

日時:2023年10月21日  14:00~17:00

会場:田辺市役所 3階 第一会議室

今回の講義は、㈱南紀白浜エアポート誘客・地域活性化室長 森重良太 氏を講師に迎え、南紀白浜空港を起点とした地方創生の取組について、その戦略と具体事例の紹介をいただきました。

■講義 「空港型地方創生への挑戦 ~戦略編・具体事例編~」

講師 ㈱南紀白浜エアポート誘客・地域活性化室長 森重良太 氏

森重さんは福岡県出身で、東京の大学を卒業後、大手企業(NEC)や経営共創基盤(IGPI)を経て田辺市に移住。現在は㈱南紀白浜エアポートの誘客・地域活性化室長として、「地方空港の赤字再生モデル+空港を起点とした地方創生」に取り組まれています。

㈱南紀白浜エアポートが管理運営する南紀白浜空港をはじめ、地方空港の多くは赤字経営という厳しい状況の中で運営されています。経営状況を改善するためには、先ずコスト削減が第一ですが、安全安心な空港としての機能が損なわれてしまっては意味がありません。

そこで、コストの最適化は行いつつ、安定した経営のためにはより多くの方に空港を利用してもらう必要があることから、訪れたいと思う地域をつくる、つまり地域の発展の先にしか空港の発展はないという考えのもとで、紀南エリアを「ひとつの地域」と捉え、紀南全体の活性化を目指しています。

㈱南紀白浜エアポートが地域課題として挙げるのは、

「人口減少」(内需に依存した経済構造)
「需要の偏差」(繁忙・閑散期の格差)
「消費の低さ」(日帰り客の多さ、購買機会の少なさ)

では、こうした課題を解決するためには何が必要か。

この場合、次の3つの視点による「ターゲット顧客の絞り込み」が重要であるといいます。

「地域資源との相性」=「関係人口の増大」
「非ピークに来訪」=「非ピークの底上げ」
「高い消費単価」=「長期滞在・広域周遊」

「ターゲット」を絞るとは、言い換えればターゲット以外は「捨てる」ということ。
大変勇気の要ることですが、そうすることで空港としての活路を見出していくということです。

では、そうして絞られた「ターゲット顧客」とはどのような客層でしょうか。

㈱南紀白浜エアポートが設定したターゲット顧客は、「ビジネス客」、特に「ワーケーション」の誘致に注力するということでした。

ここで重要なのは、㈱南紀白浜エアポートでは、ワーケーションを単に観光地でテレワークで仕事をするということではなく、企業の働き方改革、もしくは新規事業の創出や地域課題の解決による地方創生に資するものとして定義している点で、その誘致については、短期的には平日需要の底上げ、長期的には関係人口の創出から企業誘致、その先の雇用創出・移住定住(UIJターンの促進)までを目的としたものです。

思い切ってターゲットを絞ることで、競合他社が分かり、持続可能なビジネス(商品・サービス内容、料金設定等)にするには何をしなければならないかが自ずと明確になるといわれます。これを㈱南紀白浜エアポートの取組に当てはめた場合、明確になった「やるべきこと」とは、地域事業者との連携により誘客の仕組や強固な受入体制を構築し、顧客目線に立ってサービスを最適化することで旅行プロセス全体の価値を向上させることであり、その結果として地域全体で稼げる状態を創り出す。

こうした顧客目線の取組の事例として、大手人材育成企業との連携によるワーケーション専用パッケージや、地域事業者との連携による地域課題解決型人材育成プログラムの開発、また、ビジネス客向けの小型EV車やオンデマンドタクシーの実証実験、さらには100%和歌山素材の弁当も提供するなど、ビジネスやワーケーションで来られた方が最初から最後まで満足していただけるようなサービスの提供に、着地型旅行業の強みも活かしながら取り組んでいるというご説明をいただきました。

森重さん曰く、「首都圏の企業は、地方の地域課題や地域事業者との連携の中で、新たなビジネスを生み出すことに大変興味を持っている」とのこと。そして、和歌山県(特に紀南エリア)は人口減少を起因とする多くの地域課題を抱える一方で、豊かな自然や歴史、文化、食、そして魅力的な人材など、多くの地域資源も有することから、実はワーケーションのフィールドに最適な地域であるとのことです。

ワーケーションは、首都圏等の企業とその社員、受け入れ地域(地元事業者等)の3つのプレーヤーにより成り立っていますが、この三者が共にWin-Winになることが持続可能な取組となるためには必要で、紀南エリアにはそのポテンシャルがあるといえます。

森重さんの仕事のモットーは「持続可能で稼げる地域」をつくること。

㈱南紀白浜エアポートが取り組むワーケーション誘致を通して、地域が抱える様々な課題と都市圏の企業課題を同時に解決する仕組づくりを実現する。そのために地域(地域事業者)と都市圏の企業とをつなぐ“地域コーディネーター”の役割を担いながら、㈱南紀白浜エアポートが目指す地域ビジョン『関西の奥座敷から、日本の和歌山、世界のKii(紀伊)へ』(年中通して国内・世界から観光・ビジネスの来訪者が来て消費する地域)の実現に向け、これからも森重さんのチャレンジは続いていきます。

今回の講義では、塾生それぞれがターゲット顧客を改めて考えてみること、また、自身の強みを活かして㈱南紀白浜エアポートの挑戦に連携できることはないか、そうしたことについても考える機会となりました。

■グループディスカッション