2日目

開講式

日時:2022年08月06日  13:30~16:00

会場:田辺市役所 別館3階 大会議室

田辺市と熊本大学熊本創生推進機構の共同主催により、地域課題をビジネスで解決する人材の育成とビジネスモデルの創出を目指した「たなべ未来創造塾第7期」の開講式を開催し、令和5年2月までの約8か月にわたる取組がスタートしました。

開会挨拶

たなべ未来創造塾長・田辺市長 真砂充敏

たなべ未来創造塾では、これまで6期70名の修了生を輩出してきました。

修了したあともつながりを継続させるため、先日、たなべ未来創造塾とたなべプチ起業塾の修了生の交流会を開催しましたが、その中で私から庁舎跡地を含めた田辺湾全体をどう活用していくのかという話をさせていただいたところで、是非一緒に考えていただきたいと思っています。

たなべ未来創造塾では、実行率は70%を超え、評価につながっていますが、それだけにとどまらず、修了生たちが「たなコトアカデミー」「熊野リボーンプロジェクト」「ことこらぼ」といった関係人口講座に関わっていただいており、昨年、シティプロモーションアワード2021で金賞と特別賞(人材育成賞)を受賞、2022年度「SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業」にも選定されました。

また、熊本大学が中心となり、一昨年前より熊本県八代市、富山県南砺市で、昨年度より熊本県天草市、阿蘇地域、玉名市、さらに今年度からは菊池市で開催する予定となっており、姉妹塾が他地域へと広がっています。

そのため、全国レベルで連携しながら前進できる環境になりつつあります。

この機会に新たな一歩を踏み出してほしいと思っています。

来賓挨拶

近畿財務局和歌山財務事務所長 田中好 氏

近畿財務局は財務省の出先機関として、地域貢献を果たすべく、地域活性化に向けた取組を進めてきました。
たなべ未来創造塾については、平成29年度から協力させていただいていますが、この取り組みは地域活性化の成功事例として全国からも注目を集めています。

活動を拝見して、塾生、修了生の皆さんは、強い絆で結ばれていると感じています。

私が大津財務事務所に在籍しているときにたなべ未来創造塾の取組を知り、その当時から関心を持っていました。
皆さんのこれからの取り組み、活動を大変楽しみにしています。

来賓挨拶

日本政策金融公庫南近畿地区統轄 田上和彦 氏

「まち・ひと・しごと創生本部」の仕事に関わっていた頃から田辺市の取組みは非常に有名で、いつか拝見したいと思っておりました。

平成26年に「たなべ営業室」を創設され、平成28年度から「たなべ未来創造塾」がスタートしましたが、平成29年5月に田辺市と日本政策金融公庫田辺支店との間で「経営者育成にかかる連携協定」を締結、令和3年には熊本大学、田辺市、日本政策金融公庫田辺支店、八代市、日本政策金融公庫八代支店の5者で「地方創生人材育成にかかる連携協定」を締結し、連携を深めさせていただいております。

これまで、「たなべ未来創造塾」の卒業生や受講生のうち半数の方々に対し、金融支援をさせていただいてきました。但し、公庫単体ではできることは限られます。商工会議所・商工会には経営面のご指導をいただき、信用保証協会、紀陽銀行、きのくに信用金庫とは協調融資という形で、言わば「まちぐるみ」で当塾を応援させていただいております。

また、今年度は、11月に田辺市において公庫本部が「移住創業イベント」を開催させていただくこととしており、第7期生の皆さんにはこうしたことにもご参加いただきながら、「たなべ未来創造塾」を精一杯楽しんでいただきたいと思います。

オリエンテーション ~たなべ未来創造塾が目指すもの~

講師:熊本大学熊本創生推進機構 金岡省吾 教授

シンクタンク時代に様々な計画書づくりをしてきましたが、第三者が作ったプロジェクトは動かないということに気づき、動く仕組みをつくろうと大学に転身し,富山へIターンしました。大学では「産学官金」で地域課題をビジネスで解決する人材を育成する地域再生塾に取り組み、イノベーションネットアワードで優秀賞を受賞、内閣府まち・ひと・しごと創生本部「人材・組織の育成及び関係人口に関する検討会」に招聘されるなど、その取組が評価されるようになってきました。

地域再生塾は、大学での試作事業を魚津市へのノウハウ移転から始まり、高岡市、田辺市へ、今では熊本県八代市、阿蘇地域、天草市、玉名市、富山県南砺市、今年度から熊本県菊池市へと,そのナレッジが広がっています。

人口減少社会を迎え、地域づくりは大きく転換しています。

RESASデータを見ると、地方では、高校卒業後に大学へと進学する「社会減」が顕著で、2050年の将来人口メッシュでは、誰も人が住まなくなってしまうエリアが著しく増加します。結果として,人口減少は空き家の増加、買い物難民、交通弱者…様々な地域課題を引き起こします。

このため国では、地域発イノベーションの創出、起業増加町など「地域課題をビジネスで解決」することが、地域と企業のwin-winの関係性の構築、持続性のある地域づくりにつながるとして重要であることを,国土形成計画などにて示しています。

こうした背景のもと、各地で地域再生塾を立ち上げ、田辺市では70%を超える実行率、さらに阿蘇地域や玉名市では80%超、天草市では90%あまりと多くの塾生たちが動き始めています。

こうした新たな地域づくりについて,直接,市役所職員,塾生が大学生に講義する機会を提供し、その結果,地域で活躍する大人たちがカッコいいと感じ、地方創生に関わりたいという若者が増えています。実際に大都市の企業には,企業戦略として地方創生を採用の武器にする動きが活発になりつつあり、地方創生は企業経営を大きく変え始めています。

また、高校の教育も同様に変わり始めていて、魚津市の新川高校では、魚津三太郎塾の塾生とともに市役所職員,大学が関与し,地域定着に資する教育カリキュラ改革(総合的な学習の時間を活用した高校版地域再生塾としてのキャリア教育)を行った結果、文部科学省「キャリア教育推進連携表彰」で優秀賞を受賞とともに、減少していた応募者が増加に転じ、地域から必要とされる学校へと高校のブランドイメージを向上させました。人口減少に歯止めをかけるためには、高校を卒業するまでに地域のカッコいい大人と関わることが非常に重要なのです。新たな社会減克服の可能性を秘めるこの動きは,他の姉妹塾間でも始まろうとしています。

最後に,地域課題の中にビジネスチャンスが転がっています。企業経営,大学運営,高校経営にとっての重要性を紹介してきましたが,ここに気づけるかどうかが大きな分かれ目ともいえるのではないでしょうか。皆さんは気づけますか?塾生OBと同様,講義を通じて体感してみてください。

田辺市たなべ営業室 鍋屋安則

2020年国勢調査の速報値において、田辺市の人口はついに7万人を切りました。

全国平均より早いスピードで人口減少が進んでいるという状況です。

人口減少が起因となり、生活関連サービスの減少、空き家・空き店舗の増加、学校の統廃合など様々な地域課題を引き起こし、こうしたことが雇用の減少や地域コミュニティの低下につながり、さらに人口減少を加速させてしまいます。

具体的にどう進めるかという中で、当時、富山大学で既に実践されていた金岡教授と巡り合い、田辺市で一緒にやってもらえませんかとお願いしたところ、金岡教授の答えは“コンサルへの丸投げは絶対にするな、行政職員が自ら考え汗をかけ”その覚悟があるなら協力するということでした。

その後、様々なことを学ぶ中で、特に重要なのは地域課題をビジネスで解決することで地域と企業が共通価値を創造するCSVという考え方です。

こうした考えを具体的に実践するため、「産学官金」が一体となった支援体制を構築したうえで取り組んでいるのが「たなべ未来創造塾」。平成28年に創設し、6期70名の修了生を輩出してきました。

これまで多様なローカルイノベーションが生まれ、様々な媒体で掲載されるようになり、「まち・ひと・しごと創生本部」のゲストスピーカーとして招聘されるなど、全国からの注目が高まっています。

その理由は、
①70.7%という実行率の高さ
②修了生同士がつながってビジネスが自走

一つ一つは小さいかもしれない。
しかし、それらをつなぎあわせることで面にし、地域の大きな力にしていく。

「たなべ未来創造塾」では、こうしてみんなで地域を創っていくことに取り組んでいるのです。

講義を通じて、地域課題の中にビジネスチャンスがあるということに気付いたら、その中から自分の本業や強みを生かして解決できる地域課題を探してほしいと思っています。

塾生自己紹介

塾生が各自1分で自己紹介を行い、企業情報や事業内容、参加の動機、抱負などを話しました。

トークセッション:テーマ「これからの時代に求められる価値創造とは」

パネリスト
真砂充敏(たなべ未来創造塾長 田辺市長)
甲斐広文 氏(熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長)
田中 好 氏(近畿財務局和歌山財務事務所長)
武藤純司 氏(日本政策金融公庫田辺支店長)
会場の皆さま

コーディネーター
金岡省吾 教授(熊本大学熊本創生推進機構・教授)

<金岡教授>
シティプロモーションアワード受賞、SDGs未来都市選定のご感想は

<真砂市長>
新しいことに取り組むというよりも、今まで取り組んできたSDGSに磨きをかけ、次に引き継ぐことが重要だと思っており、こうしたことが評価いただけたことは大変うれしい。

環境だけでなく、社会や経済と一体化することが重要で、これが高い評価につながっており、シティプロモーションアワードでの受賞も同様の理由。

厳しい状況の中だが、市としても挑戦して乗り越えていきたい。

<金岡教授>
姉妹塾が続々と立ち上がっていますが

<甲斐副学長>
同じ考えの仲間が全国にいることは塾生の皆さんにとって財産。地域を越えて連携することが可能になる。4期生の更井さんがきっかけとなり、梅の種の仁の活用に向けて熊本大学で分析している事例もある。これは連携しているからできること。今後も県を越えた新たな連携が進めば。

<金岡教授>
和歌山県内の新型コロナの影響は

<田中所長>
行動制限がなくなったこともあり、ゴールデンウィークは人手が多かった様子。観光客数は、コロナ前に比べると7~8割まで回復していると聞いている。また、宿泊や飲食をはじめ雇用は堅調に推移している。

一方、自動車販売は半導体の部品が入らず販売数減少。感染拡大はまだ続いているため、今後の影響を十分見ていきたい。

<金岡教授>
未来塾、地域に対する感想は

<武藤支店長>
この地域は、人がおだやかで地域の魅力が非常に多い。しかし、人口減少で廃業が見られるため事業承継が重要と感じる。

未来塾では、自分たちで地域課題を考えることが重要だと感じさせられた。また、修了生の講義を聞いて、皆さん修了してからも地域課題を考えており、企業理念に入れている修了生もいる。修了後も同期やOBが関与し、ネットワークが重層的になっている。修了生には移住者も多いが、地域とのつながりが持てるのは大きなメリットだと思う。

<金岡教授>
コロナ禍でこれから何が必要か

<真砂市長>
コロナでデジタル化が進展する中、「働き方」「考え方」「暮らし方」が変わる。未来塾の運営もこれまでのようにコミュニケーションが取りづらい状況でリモートでの難しさを感じる。そのため、変えるべきところ、変えないところの見極めが重要ではないか。時代の変化はチャンス。それを活かせるかどうか。

<甲斐副学長>
市長の意見のとおり、オンラインが進むことで、コミュニケーションの難しさを感じている。やはり対面の良さがある。常にマスクしているため顔が認識できなくなり、コミュニケーションがとれないことにもつながっている。中長期的に考えると子どもたちに悪影響が出るのではないかと危惧している。外へならマスクをとれるので、そんな機会も必要ではないか。

<金岡教授>
金融行政の視点からのビジネスチャンスとは

<田中所長>
金融機関には、地域企業に寄り添った支援をお願いしている。

低金利で金融機関も経営が厳しい中、塾生の皆さんと同様に地域課題と向き合う姿勢を明確にしており、各金融機関とも創業やビジネスマッチングなども含め地域企業の支援の取組を強めているので、金融機関に相談するのも一つの方法。

<金岡教授>
未来塾NEXTの概要と今後の取り組み

<武藤支店長>
6期生として公庫職員が参加し、修了後の支援を行う「未来塾NEXT」を発表した。修了式で発表するプランはまだまだ粗い部分があるため、金融機関・信用保証協会を含め支援していくというもの。

具体的には、
①実現に向けた支援…創業ゼミ、セミナー、個別相談、ビジネスマッチング
②金融ワンストップ窓口…信用保証協会、紀陽銀行、きのくに信用金庫と協調しながら支援
③情報発信…事業事例集への掲載支援やプレスリリースなど

<金岡教授>
市の今後の施策、塾生への期待は

<真砂市長>
2年後に庁舎が移転するため、その跡地をどう活用するか。そのため、1年かけて庁舎跡地だけでなく田辺湾全体をデザインしていきたい。

また、2024年の世界遺産登録20周年、2025年の大阪・関西万博も見据えた施策を検討することが必要だと考えている。

協力・後援機関・講師からのエール

  • 皆さん、しっかりしたプレゼンで一人一人とじっくり話をしてみたいと思った。神島高校とのプロジェクトにも協力しているが、是非、高校生の手本にもなっていただければ。
  • 7年前、別の支店に在籍していたから未来塾のすばらしさを塾生から聞いていた。地域支援部を通じて何か支援できれば。
  • 借金はしないほうがよいが、事業拡大するためには必要。金融機関と連携しながら皆さんを支援していきたい。和歌山県の企業数はピーク時65,000社であったが今は40,000社あまりと大幅に減少している。新たな起業に向けた機運が田辺市を中心に広がっていけばと期待している。
  • コロナの間、先行きが見えず経営は非常に大変な状況。しかし、ピンチの中にチャンスあると思う。そのチャンスを見つけられる力が大事。
  • 皆さんすでに構想がしっかりしている。一緒に課題を考えて連携先の一つになれれば。未来塾には「産学官金」の支援体制があるので具体的なプランにしてほしい。
  • これまで銀行は融資が本業だったが、今では地域企業の本業支援に半分以上取り組んでいる。従来と異なり地域企業に利益をあげていただくことが大切だと思っており、皆さんを是非支援したい。

修了生からのメッセージ

  • 未来塾はとってもいい事業。新しい情報を得て、新しいことにチャレンジできる場だと思うので、積極的に講義に臨んでほしい。
  • 講義を聞いても最初は理解できなかったが、金岡先生のある時一言を聞いて全部つながった。講義を通じて発想力を養ってほしい。

閉会挨拶

熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長 甲斐広文 氏

異業種の皆さんの化学反応を期待しています。

今回は、画家の方もいらっしゃいますが、アートの感性がビジネスには大切だと思っています。これまでのシステムや経験ではなく、ひらめきや感性が今まで誰も考えることのなかったビジネスプランにつながると思います。

修了式でお会いできることを楽しみにしています。